事故などで脊髄が傷つき手や足などが動かせなくなった患者の治療に使う、患者自身から取り出した特殊な細胞について、国の専門家会議は医療製品として承認する方針を決めました。今後、保険の適用に向けた手続きが行われる見込みで、脊髄損傷を治療するための細胞が医療製品として承認されるのは初めてです。
脊髄損傷は、事故などで背骨の中の神経が傷ついて手や足の感覚がなくなったり動かなくなったりするもので、毎年新たにおよそ5000人ほどがなるとされ、有効な治療法はありません。
医療機器メーカーの「ニプロ」は札幌医科大学と共同で、脊髄が損傷した患者の骨髄の中から、「間葉系幹細胞」と呼ばれる特殊な細胞を取り出し、培養して増やしたうえで、5000万個から2億個程度を血液中に戻すことで、症状を改善させる治療法の開発を行ってきました。
「間葉系幹細胞」は脊髄の傷ついた場所に集まって神経細胞に変化したり、傷ついた細胞を修復させる物質を出したりして症状を改善させるということで、国の専門家会議は21日、「一定の有効性が期待できる」として、今後7年以内に改めて有効性や安全性を検証することなどを条件に、この細胞を医療製品として承認する方針を決めました。
厚生労働省によりますと、脊髄損傷を治療するための細胞が医療製品として承認されるのは初めてで、世界的にも珍しく、今後、保険を適用する手続きが進められる見込みです。
脊髄損傷を巡っては、慶応大学の研究チームがiPS細胞を使った臨床研究を計画しているほか、海外ではES細胞を使った臨床研究が行われています。
-- NHK NEWS WEB