日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が逮捕された事件のあと、日産の現役社員がNHKのインタビュー取材に初めて応じ、「愛着のある会社を食い物にされ、許し難い」と心情を語りました。
日産の現役社員は、ゴーン前会長逮捕のニュースを聞いたときの心境について「非常に意外で、驚いたのと同時に、自分の会社のトップがこのようなことになり、恥ずかしいと感じた」と語りました。
また、ゴーン前会長が正当な理由がないのに会社側から海外で住宅の提供を受けるなどしていた一方、社員に対しては厳しいコンプライアンスを求めていたことについて「贈答品や接待を受けることを禁じ、誓約書を提出させるくらい徹底していたので、まず自分の身を正してほしい」と批判しました。
そのうえで、こうした不正が長年、見過ごされてきたことについて「経営状態の苦しかった日産をV字回復させ、さまざまなプランを成功させてきたことで、誰もゴーンさんには逆らえない雰囲気だった。チェック機能が働かなかったことがいちばんの問題だ」と指摘しました。
さらに、近年はゴーン前会長による日産の経営への関与の度合いが小さくなっていたという指摘がある中で、高額の報酬が支払われ続けていたことについて「ルノーのトップを兼任し、さらにヨーロッパ自動車工業会の会長を務めるようになると、ゴーンさんが日本にいるのかいないのか、何をしているのか分からなくなった。それでも報酬が変わらないのはどうしてだろうと思った」と疑問を呈しました。
一方、ことし3月、ゴーン前会長がルノーと研究開発部門を統合すると発表するなど、ルノーとの連携強化を進めようとしたことについて「会社の生い立ちも社員の考え方も違う2つの会社を、何でもかんでも連携させるのは本当にメリットがあるのかと感じる。ルノーは自分たちの基準を日産に押しつけてくるという話が聞こえてきた」と社内で警戒感が広がっていたと証言しました。
そして、今回の事件がもたらした日産への影響について、この現役社員は「愛着のある会社を食い物にされ、許し難い気持ちだ。ブランドイメージもお客様の信頼も、壊れるのは一瞬だ。相当時間はかかるだろうが、ゴーンさんが壊したものは、われわれ全社員が直していくしかないと思う」と悔しい思いをにじませました。
-- NHK NEWS WEB