10年前のリーマンショックのあと、派遣社員が突然契約を打ち切られたいわゆる「派遣切り」。当時、日産自動車から派遣切りにあった元従業員の女性が、カルロス・ゴーン前会長が逮捕された事件を受けてNHKのインタビューに応じました。
コストカットを進めてきたゴーン前会長が巨額の報酬をめぐる疑いを持たれていることについて、今の心境を語りました。
リーマンショック後の2009年、日産は国内外で2万人の従業員を減らす計画を明らかにしました。
日産本社の車のデザイン部門で2003年から派遣社員として働いていた神奈川県の40代の女性も突然、解雇を言い渡されました。
女性は当時の状況について「ゴーン社長(当時)から社内放送で『これからリストラを行う』と言われた。ゴーン社長は『市場の冷え込みと為替相場、それにリーマンショックなどでかつてない困難に直面している。ここから立ち上がるために全員で痛みを分かち合おう』と演説していた。その時は、しかたのないことで『経営陣の責任ではない』と言っていた。非正規や派遣社員を踏み台にしたなという印象で、しかたないけど悲しいという気持ちだった」と振り返りました。
今回、ゴーン前会長が逮捕されたことについて「結局、私たち従業員の人生を踏み台にして私腹を肥やしていたと思うと怒り、怒り、怒りしかない。ゴーン氏は私たちをコストとして切り捨てたが、日産にとっての最大のコストはゴーン氏だったのではないか」と今の心境を語りました。
女性は日産との団体交渉を求めて今も中央労働委員会で争っています。
女性は日産に対して「大量解雇はゴーン氏がやったことなので、今回の逮捕を受け、ゴーン氏の負の遺産である労働争議を解決するよう前向きに話し合いに応じてほしい」と求めました。
一方、「日産はコスト優先で車を作ってきたため、ユーザーのためにならない車が多かった。短期の目標を優先していたゴーン氏がいなくなって日産は生まれ変わるチャンスだと思う」と会社に対する期待もにじませました。
-- NHK NEWS WEB