日産自動車の社内では、経営の自主性を求め、提携の在り方を見直そうという意向が強まっていますが、大株主のルノーやフランス政府の思惑もあって簡単ではありません。
3社連合のうち日産とルノーは株式を持ち合っています。
日産はルノーの株式の15%を持っていますが、議決権はありません。
一方でルノーは日産の議決権付き株式の43%余りを持つ大株主で、事実上ルノーの支配力が強い構図です。
こうした資本関係とは逆に、ルノーの利益のおよそ半分が日産の株式の持ち分に応じて得られる利益で占められ、収益面では日産がルノーを支えています。
ルノーにとって、日産が経営の自主性を高めるため43%余りの株式の保有比率を下げることは、日産から得られる利益が減ることにつながるのです。
さらにルノーの大株主のフランス政府としても、ルノーの経営にとってマイナスとなれば厳しい国内の雇用への影響が懸念され、逆に日産との提携の維持・強化を強く求めています。
実際、フランス政府は2014年にフランスで株式を2年以上保有した株主の議決権を2倍に引き上げる法律を制定しました。
ルノーの支配力強化につながるこの法律の制定に日産の社内で懸念が高まりましたが、ゴーン前会長がフランス政府との間で調整を進め、今の提携関係を維持することになりました。
この際、日産が明らかにしたのが、仮にルノーが支配力をさらに強めようとした場合に備える、日本の法律に基づく対抗策です。
日本の法律では会社が互いに全体の4分の1以上の株式を持ち合うと、それぞれの議決権がなくなることになっています。
つまり、日産がルノーの株式を買い増して保有比率を25%以上に引き上げると、ルノーの日産に対する議決権は消滅するのです。
この対抗策に踏み切れば経営への関与が弱まり、ひいては提携関係が弱まる可能性もあります。
日産にとっても現在、部品の調達や生産体制の共通化によってコストを抑えるという提携のメリットに影響するおそれがあるのです。
このため、日産が経営の自主性を求めるにしても、対抗策を打つのではなく、ルノーとの提携の枠内とすることが現実的と見られています。
提携の見直しにはルノーとフランス政府の理解を得られる形にすることが必要ですが、その具体策はまだ見えていないのが実情です。
今週、3社の経営トップは今後の提携の在り方について協議を行う予定で、その内容が注目されます。
-- NHK NEWS WEB