山梨県立博物館が所蔵する葛飾北斎の浮世絵、「冨嶽三十六景」を東京の企業が最新のデジタル技術で複製したところ、これまで見ることが難しかった波しぶきや花びらが細かな凹凸を使って表現されている様子が鮮明に再現されました。博物館は「北斎の浮世絵の魅力を改めて知ってもらうきっかけになる」としています。
山梨県立博物館は江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の代表作の「冨嶽三十六景」46点すべてを所蔵しています。
これらの浮世絵は強い光に長い時間当てると変色するおそれがあるため、明るい場所では展示できず、通常の照明のもとでは、細かな表現が鑑賞しづらいことが課題でした。
こうした中、この「冨嶽三十六景」の複製に東京のデジタル関連企業「アルステクネ」が取り組み、浮世絵にさまざまな方向から光を当てて最新のデジタル技術を使ったスキャナーで読み取り、20億画素のデジタル画像を作った結果、版画を刷った当時の細かな凹凸などが立体的に再現されました。
完成した複製のうち、「東海道品川御殿山ノ不二」では凹凸のある直径１ミリ以下の点で満開の桜の花びらが表現されているほか、「武州玉川」では川のみなも全体に細かな波しぶきが表現されているのを、鮮明に見て取ることができます。
山梨県立博物館の森原明廣学芸課長は「浮世絵は絵を描く絵師と、彫り師、刷り師の三位一体の総合芸術と言われる。完成した複製で、今まで気づくことができなかった北斎の浮世絵の魅力を見てもらえる機会を作りたい」と話しています。
-- NHK NEWS WEB
