医学部の不適切入試をめぐり、大学が男子受験生を優遇した理由を問われて、「女子の方がコミュニケーション能力が高い」と釈明したことが波紋を広げています。専門家は「これは無意識の偏見と呼ばれるもので誰にでもある。“本当にいいのか”と一歩踏みとどまることが大切」と指摘しています。
今回の発言について、街なかで感想を聞きました。
都内で働く20代の女性社員は「女性だからといって、フィルターかけて見るのはおかしい」と言います。高校3年の女子生徒は「女性だからコミュニケーション力が高いのでなく個人によって違うと思います」と口にしました。
コミュニケーション論に詳しい流通経済大学の松田哲教授にも聞きました。
松田教授は、男女でコミュニケーション能力に差はないとしたうえで、「機械的にレッテルをはるのは乱暴と言わざるをえない」と述べました。
今回の発言のように、自分でも気づかないうちに、物の見方や考え方が偏ることは、「無意識の偏見」と呼ばれます。
例えば、都内にある焼き肉店が掲げていた「お1人様歓迎」という看板。専門家は女性だと1人で焼き肉店に入りづらいに違いないという女性像が影響しているといいます。
こうした「無意識の偏見」を見直す取り組みも始まっています。
大手ゼネコンの清水建設は社員研修の場で今回の医学部の問題を取り上げています。
企画した西岡真帆さんに話しを伺いました。現場監督をしていた時、女性だというだけで、道路の花の管理を任された経験があったといいます。
西岡さんは、「企業も性別でなく個々をみないと能力を最大限に発揮させられない」と話しました。
この「無意識の偏見」とどう向き合うべきか。東京大学の中村高康教授は、「“今どきの若者は”とか、“高齢者はITに弱い”など、誰もが日常的に口にしている。今回の問題を機に、自分だってやりがちだと自覚して、“本当にそれでいいのか”と、一歩踏みとどまることが大切だ」と話していました。
-- NHK NEWS WEB