日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が、私的な損失の信用保証に協力した実業家に、日産側から資金を不正に支出させたとして再逮捕された事件で、前会長が当初、日産の資金およそ30億円を実業家に融資するよう指示し、みずからの損失の担保に充てようとしていた疑いがあることが関係者への取材でわかりました。
日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)は、私的な損失の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏の会社に日産の子会社から16億円余りを不正に支出させたとして、特別背任の疑いがもたれています。
関係者によりますとゴーン前会長は、為替取引の損失をめぐって銀行側から多額の追加担保を求められたため平成20年10月、取引の権利を一時的に日産に付け替えましたが証券取引等監視委員会から問題視されたため、翌年2月に再び権利をみずからの資産管理会社に戻したということです。
その直前の平成21年1月ごろ、ゴーン前会長が日産の資金およそ30億円をジュファリ氏に融資するよう指示し、銀行側への担保に充てようとしていた疑いがあることが新たにわかりました。これを裏付ける日産内部の書面も残されていたということです。
しかし、この融資は日産内部で疑問視されたため結局、実現せず、ジュファリ氏は、みずからの資金およそ30億円を一定の期間、海外の銀行に預ける形で前会長の信用保証に協力したということです。
東京地検特捜部はゴーン前会長が当初からみずからの損失の信用保証に日産の資金を流用しようとしていたとみて捜査を進めています。
一方、ゴーン前会長はきのう、勾留理由開示の手続きで東京地方裁判所に出廷し、「ジュファリ氏は長年にわたる日産のパートナーで関係部署の承認を受け相応の対価を支払った」などと無罪を主張しました。
また、前会長の弁護士によりますとジュファリ氏は関係者を通じて「日産側からの資金はサウジアラビアで深刻な販売不振に陥っていた日産の販売店の立て直しに尽力した報酬として受け取ったものだ」などと説明しているということで、弁護士はきのうの会見で「検察はジュファリ氏から話も聞かずにゴーン前会長を逮捕した。全く異例の事だ」と捜査を批判しました。
-- NHK NEWS WEB