太平洋戦争中の「徴用」をめぐる韓国での裁判で、原告側の弁護士が新日鉄住金の本社を訪れ、賠償に関する協議に応じるよう改めて求めました。しかし、新日鉄住金は協議に応じなかったということで、これを受けて、原告側はすでに差し押さえた株式を売却して、現金化する手続きに入る考えを伝えました。
太平洋戦争中の「徴用」をめぐり、韓国では去年、新日鉄住金に賠償を命じる判決が確定しましたが、新日鉄住金は「韓国の裁判所の決定は極めて遺憾で、日本政府と協議しながら適切に対応する」としていて、賠償に関する協議には応じない構えです。
このため原告側は先月、額面で日本円にしておよそ3900万円分の、新日鉄住金が韓国内で保有する株式を差し押さえました。
そして15日、弁護士らが再び賠償に関する協議を求める要請書を渡すため、東京 千代田区にある新日鉄住金の本社を訪問しました。
しかし、原告側によりますと、新日鉄住金は受付を通じて、「面会できない。理由も申し上げられない」と伝え、協議は行われなかったということです。
このため原告側は要請書を通じて、差し押さえた株式を売却して現金化する手続きに入る考えを新日鉄住金に伝えました。
原告側は売却の手続きを今月中にも始める考えですが、手続きが完了するにはおよそ3か月かかるということで、弁護士は記者団に対して、「新日鉄住金は3か月という残り時間の間に原告側と協議して、自身の声で謝罪してほしい」と述べ、引き続き協議を働きかける考えを示しました。
このあと原告側は賠償を命じる2審判決が言い渡された機械メーカー、不二越の東京 港区にある本社も訪問しました。
しかし、不二越が「会えない」として協議に応じなかったため、近く、不二越が韓国で保有する株式を差し押さえる仮執行の手続きに入る考えを明らかにしました。
「徴用」をめぐる一連の裁判に関して、菅官房長官は14日、韓国政府が判決を受けて具体的な措置を取っていないうえ、原告側による株式売却の手続きが始まることについて、「極めて深刻だ」と述べていて、日韓関係の一層の悪化は避けられない見通しです。
-- NHK NEWS WEB