4年前、重い知的障害のある少年が死亡したのは、入所していた施設側に責任があると両親が訴えた裁判で、東京地方裁判所は施設側に対し賠償を命じました。判決では、将来働いて得られると見込まれる逸失利益について「少年は優れた能力を発揮する可能性があった」と指摘し、障害のない少年と同じ水準の金額を認めました。
都内の障害者施設に入所していた松澤和真さん(当時15)は、4年前、鍵がかかっていなかった扉から施設の外に出て行方不明になり、2か月後に山の中で死亡しているのが見つかりました。
施設側は、両親に対して過失を認め、慰謝料を支払うとしましたが、和真さんが将来働いて得られると見込まれる逸失利益についてはゼロとされたことから、両親は、障害者への差別だとして逸失利益にあたるおよそ7400万円を含め1億1000万円余りの賠償を求める訴えを起こしました。
22日の判決で、東京地方裁判所の田中秀幸裁判長は「障害者雇用の施策は大きな転換点を迎えていて、障害者が一般企業で働くことができる可能性は否定するべきでない」と指摘しました。
そのうえで、「和真さんは特定の分野に限ってみれば高い集中力があり、障害者でない人よりも優れた能力を発揮する可能性があった」として、19歳までの男女の平均賃金をもとにして、障害のない少年と同じ水準の逸失利益を認め、施設を運営する社会福祉法人に対し、およそ2200万円の逸失利益を含め合わせて5200万円余りの賠償を命じました。
-- NHK NEWS WEB