イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱をめぐって混乱が続くなか、EU側の玄関口であるフランスでも不安が広がっています。
フランス北部の港町カレーでは、先月から、税関の検査を行う施設の建設が急きょ始まりました。
離脱の期日が迫ってきても、どのような形で離脱するかが見通せず、イギリスがEUと何の取り決めもない「合意なき離脱」となった場合に備えるためです。
フランス政府は、新たに250人余りの職員を採用し、対応にあたるとしていますが、現場で働く税関の職員は、それでは十分でないとして、さらに人員を増やすよう政府に働きかけています。
税関で働くフィリップ・ボランジエさんは、「政府がさらに人員を増やさなければ、何が起こるかわかりません。たとえ通関業務が滞っても、わたしたちの責任ではなく、政府の責任です」と、不安を募らせていました。
また、フランス東部リヨンとイギリスとの間を頻繁に行き来するというトラック運転手の男性は、「フランスとイギリスの国境で本当にすべての車の通関手続きが始まるのは悲劇でしかありません。膨大な時間がかかりますし、社長は私がただ待っているだけの時間に対しても給料を払わなければならず、誰にとってもよいことはありません」と話していました。
このほか、北部の港町ダンケルクにある運送会社では、新たに社員を採用することを検討しています。
現在、通関の手続きが必要なのは、アフリカ北部のモロッコなど、1日当たりおよそ150の荷物のみで、社員が5人いれば十分、対応できますが、合意なき離脱となれば、膨大な数の荷物に対応する必要が出てくるためです。
しかし、今後の見通しは不透明で、社員の採用や研修ができないまま、離脱の日を迎える可能性が出てきています。
運送会社のシルバン・ビルモンさんは、「あらゆる可能性を予測して備えることを余儀なくされています。イギリスには、EU離脱後、EUに何を求めるのか、もっと明確に示してほしい」と話していました。
-- NHK NEWS WEB