競泳の日本選手権、女子200メートルバタフライは、19歳の長谷川涼香選手が2年ぶりの優勝を果たし、7月の世界選手権の代表に内定しました。力のある選手どうしの争いとなった決勝を制したのは、“専門家”としての意地でした。
決勝のスタート台、4レーンに入った長谷川選手の隣の5レーンは、大橋悠依選手でした。大橋選手は個人メドレーが専門。2年前の世界選手権のメダリストで、日本選手権は去年まで個人メドレーの2種目で2年連続2冠を達成した実力者です。今大会はバタフライでも世界選手権の代表をねらって、この種目に参戦してきました。
前日の準決勝。長谷川選手は、その大橋選手に2秒以上の差をつけて全体のトップで通過。レース後の取材で強い決意を示しました。
「この種目をやってきたのは私、絶対に負けられない」。
長谷川選手は3年前、高校2年生の時にリオデジャネイロオリンピックに出場。わずか0秒11の差で準決勝敗退となった悔しさをバネに、力を磨いてきました。
自己ベストは2分6秒00、世界で勝つために5秒台突入をねらっていましたが、去年、スランプに陥ります。日本選手権は2分8秒82で2位、国際大会の派遣標準記録を突破できませんでした。その後の大会も2分8秒を切ることができず「遅い原因が分からない」とレースのたびに困惑した表情を浮かべました。
そんな長谷川選手を支えてくれたのは、父親の滋さんでした。小学校6年生まで長谷川選手を指導していた父親のコーチを受け、基本を見直しました。
「プロ意識を持て」。
指導を受ける中で、滋さんは何度も繰り返したと言います。滋さんは「メーカー契約など、水泳の技術をかってもらっているんだからジュニアの子どもたちとは違う。これまでは甘いところがあった」と指摘。
厳しいことばが長谷川選手の背中を押しました。滋さんから「200メートルバタフライは専門種目、勝負もしてタイムもねらえ」と声をかけられて臨んだ6日の決勝。
長谷川選手は「人生でいちばんスピードが出ている」という体のキレを生かし、前半の100メートルを日本記録を上回る1分0秒60で折り返します。リードを広げて迎えた最後の50メートル、「波を感じた」と大橋選手に追い上げられましたが、強化してきたキックを打ち続け逃げきりました。
優勝タイムは2分7秒44。
「6秒台をねらっていたので悔しい」と振り返りながらも、そこには2分8秒の壁を破り、不振を抜け出した笑顔がありました。
「悔しい思いをしてきた。その悔しさを晴らせるように、世界選手権では2分5秒台を目指したい」。
さらに高い目標を掲げた長谷川選手の世界への挑戦が再び始まります。
-- NHK NEWS WEB