イランのロウハニ大統領は8日、すでに核合意から離脱したアメリカのトランプ政権への対抗措置として、核合意の一部の義務に従わないことを表明しました。今後、ヨーロッパなどとの交渉が不調に終われば、本格的な核開発を再開させるとしていて、イラン情勢をめぐる緊張がさらに高まるおそれがあります。
イランのロウハニ大統領は8日、アメリカがイラン核合意から一方的に離脱してから1年になるのに合わせて、日本時間の午後2時すぎ、国営放送で演説しました。
この中でロウハニ大統領は「アメリカの勝手な行動で、核合意を勝者と敗者の合意にさせるわけにはいかない」と述べて、アメリカへの対抗措置として、核合意の一部の義務に従わないことを表明しました。
具体的には、国内での貯蔵が一定水準を超えないよう定められている、濃縮ウランと重水の国外への搬出を8日以降、取りやめるとしていて、核開発に使われかねない原料の貯蔵が進むことになります。
さらに核合意に参加したヨーロッパ各国などとの交渉が60日の間で進展しなければ、核兵器に使われる高濃度の濃縮ウランの製造など、本格的な核開発を再開させるとしています。
一方で「われわれは交渉のテーブルから出て行くわけではない」と述べて、引き続き核合意の枠組みにはとどまると強調し、外交交渉による解決を目指すとしています。
イランは、アメリカの経済制裁によって外国企業の撤退が進み、経済の悪化が続いていて、ヨーロッパ各国に対して、制裁からイランの国益を守る措置を強く求めていました。
イランによる今回の表明で、核合意の枠組みを維持することが一層困難となる見通しで、イラン情勢をめぐる緊張がさらに高まるおそれがあります。
-- NHK NEWS WEB