地震の衝撃を逃がすため多くのマンションで導入されている「構造スリット」と呼ばれる耐震構造の施工ミスが、東日本大震災以降、少なくとも全国40以上のマンションで相次いで見つかっていたことが複数の専門家の調査で分かりました。専門家は「施工ミスによって大地震の際に建物が倒壊するおそれもあるが、実際に被害が出ないと発覚しないケースが多く、こうしたミスは多くのマンションで潜在化している可能性がある」と指摘しています。
「構造スリット」は、地震の揺れで建物が損傷するのを防ぐため柱と壁などの間に隙間を入れて地震の衝撃を逃がす耐震構造で、平成7年の阪神・淡路大震災を教訓に、マンションなど鉄筋コンクリートの多くの建物で導入されています。
しかし東日本大震災以降、マンションの管理組合から委託を受けた東京の不動産コンサルタント会社や1級建築士が調べたところ、この構造スリットが設計どおりに施工されていなかったり、隙間に入れる緩衝材がねじれたりする施工ミスが、少なくとも全国40以上のマンションで相次いで見つかっていたことが分かりました。
関係者によりますと、このうち大手不動産会社が販売した愛知県内のマンションではことし1月、構造スリットの施工ミスによって柱の一部が欠損していことが分かり、会社側がミスを認めて住民側に謝罪し、今月まで補修工事が行われました。
構造スリットが設計どおりに施工されていない場合には建築基準法に抵触するおそれがありますが、専門家によりますと、構造スリットはコンクリートの中にあって外からは見えないため、実際に地震で被害が出たりひび割れなどの不具合が起きたりして調査しないかぎり、施工ミスが発覚しないケースが多いということです。
マンションの耐震構造に詳しい大阪大学の鈴木計夫名誉教授は「柱が欠損するなどの重大な施工ミスがあれば建物の強度が下がり、大地震の際には倒壊するおそれもある。こうしたミスは多くのマンションで潜在化している可能性があり、改めて調査を進めるべきだ」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB