アメリカが中国を「為替操作国」に認定したことについて、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「為替操作国の認定は、通常、アメリカの財務省が年に2回発表する『為替報告書』の中で認定するもので、今回の措置は異例だ」としています。
そのうえで、為替操作国の認定の引き金となったのは、中国の人民元が11年ぶりの元安水準になったことだと指摘し、「トランプ大統領は、アメリカの中国に対する追加の関税上乗せへの報復措置として、中国が人民元を切り下げ、自国の製品の競争力を高めようとしていると受け止めている。人民元の切り下げに対する、さらなる報復措置として、為替操作国の認定に踏み切ったと考えられる」と分析しています。
そして、「為替操作国の認定で、米中の対立は今後さらに激化し、貿易戦争から通貨安戦争へとステージが移ってきている」としたうえで、「今後、アメリカは中国だけでなく、日本やヨーロッパの金融緩和政策を、通貨安を目的としたものだと批判し、アメリカのFRBにもさらなる金融緩和を求め、結果的に、世界的な通貨切り下げ競争につながってしまうおそれがある」と指摘しました。
一方、中国については、「報復する手段があまり残されていないが、中国人観光客のアメリカへの渡航を制限したり、中国に進出しているアメリカ企業に何らかの規制をかけたりするなどの対応を取る可能性はある」としています。
さらに、来年のアメリカの大統領選挙に関し、「中国は、トランプ大統領が選挙で負ければ、対立は緩和に向かうと考えていて、時間稼ぎをしたいという思惑があるが、トランプ政権は、時間稼ぎをさせないように圧力をかけているという構図だ。トランプ政権は、国民からの支持を得るため、引き続き、中国により強硬な姿勢で臨むだろう」と述べ、米中の対立が解消に向かう見通しは立たないという見方を示しました。
-- NHK NEWS WEB