520人が犠牲になった日航ジャンボ機墜落事故から34年となりますが、遺族の高齢化が進み慰霊の登山を断念する人もいます。このため、現場の画像をインターネットで見られるようにすることで、慰霊登山をできない人にも今の様子を伝えようという取り組みが行われています。
取り組んでいるのは、墜落事故で49歳だった父親の謙二さんを亡くした山本昌由さん(39)です。
昌由さんは当時5歳、謙二さんは出張から帰る途中でした。
昌由さんはこの34年、ほぼ毎年御巣鷹山を訪れていますが、高齢化が進み慰霊登山を断念する人が出てきていることや、事故を知らない若い世代が増えてきていることが気がかりだったと言います。
そこで今月3日、みずから登山をしながら現場の様子を撮影し、インターネットで伝えることにしました。
360度パノラマ撮影ができる小型カメラを頭上に掲げながら、御巣鷹山を登りました。
亡くなった人たち、一人ひとりの墓標や墜落現場にある慰霊碑「昇魂之碑」など、撮影した画像はアメリカの大手IT企業、グーグルが提供する「ストリートビュー」を通して見ることができます。
昌由さんは「御巣鷹山に来ると父に会えたような気がして、また1年頑張ろうという気持ちになります。慰霊登山ができない方にも家族が眠っている場所の現状を知ってもらうことで、少しでも心が安らげばと思います」と話していました。
昌由さんの母親で、大阪府内に住む啓子さん(74)もことし、慰霊登山を断念した1人です。
4月に足を骨折し、まだ痛みが残るためです。
命日となる12日は、自宅の庭に咲いていた花を遺影に手向けて静かに手を合わせました。
そして、昌由さんが撮影した画像をまるで登山をしているかのようにじっくりと見て、謙二さんの墓標にたどりつくと、画面に向かって手を合わせ「ことしは行けなくて申し訳ない」と語りかけていました。
啓子さんは「まさか自分が現場に行けない日が来るなんて思いもしませんでしたが、それだけの歳月がたったということを痛感します。現場の画像を見ると、行った気持ちになれて感無量です。画面を通してですが、『子どもたちがそれぞれの立場で頑張っていますよ』ということと、『私の健康を守ってくださいね』と亡き夫に伝えたいです」と話していました。
現場を撮影した山本昌由さんは、画像を通して事故の事実とその教訓を若い人たちにも知ってもらいたいと考えていて、今後も定期的に画像を更新して伝えていくことにしています。
-- NHK NEWS WEB