44人が亡くなった東京 新宿区歌舞伎町のビル火災から、まもなく18年。警視庁が専門家と共に、煙がどう広がったのか検証した鑑定書の元となる一酸化炭素ガスなどの変化を示す詳細なデータを入手し、CGで再現しました。そこからは、防火扉が正常に閉まっていれば44人全員が助かっていたことが浮かび上がってきました。
平成13年9月1日の未明、東京 新宿区 歌舞伎町にあった雑居ビルから火が出て、3階のマージャンゲーム店や4階の飲食店にいた従業員や客など、合わせて44人が死亡しました。
警視庁は専門家と共に煙の広がりを検証した鑑定書をまとめましたが、NHKはその元となる酸素や二酸化炭素、一酸化炭素ガスの変化を示す20秒ごとの詳細なデータを入手し、データ解析会社の協力でCGを作成しました。
防火扉の前に荷物やゴミ袋が置かれ、扉が閉まらなかった当時の状況では、火災からおよそ10分後に意識レベルや運動機能の低下がみられ、その場にいる人の半数が死に至る状態になるのは、3階が12分後、4階が13分後、全員死亡するのは15分後からとなりました。
一方、防火扉が正常に閉まったという想定では、大きな違いがみられました。
4階では、およそ20分後に意識レベルや運動機能の低下がみられ、24分後に意識レベルや運動機能に重篤な症状が出る状態となりますが、30分たっても死に至る状況にはなりませんでした。
3階では、およそ29分後に意識レベルや運動機能の低下がみられる程度で済みました。
当時、消防隊が店舗に救助に入ったのは火災のおよそ30分後で、防火扉が正常に閉まっていれば、44人全員が助かっていたことが浮かび上がってきました。
鑑定にあたった元警視庁科学捜査官で医学博士の服藤恵三さんは「防火扉が閉まっていれば、意識や運動機能の低下で歩くのがつらい人が出る可能性はあるが、ものを判断する意識自体はまだ混濁していないので、十分助け出せたと思う。この教訓を生かしていかなければならない」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB