アメリカを訪れている安倍総理大臣はトランプ大統領と初めての首脳会談に臨み、アジア太平洋地域の安全保障環境に関する懸念を共有し、日米同盟や、ほかの同盟国などとの協力関係を強化していくことが重要だという認識で一致しました。
また両首脳は、麻生副総理とペンス副大統領の下に経済対話を発足させ、財政・金融政策などのマクロ経済政策での連携や2国間の貿易に関する枠組みなどを包括的に議論していくことを確認しました。
アメリカのワシントンを訪れている安倍総理大臣は、日本時間の午前2時すぎからおよそ40分間、トランプ大統領との初めての日米首脳会談を行ったのに続き、共同記者会見を挟んで、およそ1時間、昼食をとりながら意見を交わしました。
会談などには、日本側から、麻生副総理兼財務大臣や岸田外務大臣らが、アメリカ側からはペンス副大統領らが同席しました。
この中で、両首脳は、核や弾道ミサイルの開発を進める北朝鮮や、東シナ海、南シナ海の情勢について意見を交わし、一層厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境に関する懸念を共有したうえで、日米同盟の絆を一層強固にするとともに、アジア太平洋地域と世界の平和と繁栄のために日米両国で主導的な役割を果たすことを確認しました。
また、両首脳は、在日アメリカ軍の重要性を確認し、日米同盟を不断に強化するとともに、日米同盟を基軸に、ほかの同盟国や有志国との間で重層的な協力関係を強め、同盟のネットワークを構築していくことが重要だという認識で一致しました。
そして、早期に両国の外務・防衛の閣僚協議、いわゆる2+2を開催して、双方の役割・任務・能力の見直しを含む同盟強化の方策を協議することになりました。
さらに、アメリカが核戦力を含む軍事力で日本を守る「拡大抑止」を引き続き提供することや、アメリカの防衛義務を定めた日米安全保障条約を沖縄県の尖閣諸島に適用すること、それに、沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題は、名護市辺野古への移設が唯一の解決策であることを確認しました。
一方、経済分野で、両首脳は、日米両国が自由で公正な貿易のルールに基づき、両国間および地域における経済関係を強化することに引き続き関与していくことを確認したほか、双方の利益となる個別分野での協力を積極的に推進していくことで一致しました。
そして、「アジア太平洋地域の平和と安定の礎である日米同盟は、防衛・安保のみならず経済によっても支えられており、摩擦という言葉に象徴された日米経済関係は遠い過去である」ことを確認しました。
さらに、安倍総理大臣が「日本企業は現地生産を通じてアメリカに多くの雇用や投資を生み、アメリカのよき企業市民として、アメリカと常に歩み、摩擦を乗り越えてきた」などと説明したのに対し、トランプ大統領は「日本企業のアメリカへの投資を評価し歓迎しており、今後の拡大を期待している。そのための環境整備に力を尽くしたい」と述べ、双方に利益を生む経済関係の構築を目指す考えを示しました。
そのうえで、両首脳は、麻生副総理とペンス副大統領の下に経済対話を発足させ、財政・金融政策などのマクロ経済政策での連携や、インフラ、エネルギー、宇宙、サイバーなどの分野の協力プロジェクト、それに、2国間の貿易に関する枠組みを包括的に議論していくことを確認しました。
このほか、安倍総理大臣は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の経済的、戦略的な意義を説明し、両首脳は、自由貿易の重要性を確認しました。
会談に同席した萩生田官房副長官は記者会見で、トランプ大統領から日本の金融・為替政策や自動車市場に関する批判的な発言や注文は無かったことを明らかにしたほか、「トランプ大統領から2国間の貿易協定の要請も無かった」と述べました。
さらに、萩生田副長官は、記者団が「トランプ大統領から在日アメリカ軍の駐留経費の増額などについて発言は無かったか」と質問したのに対し、「駐留経費の話は先のマティス国防長官の訪日の際に完了しているという認識であり、改めてその話は無かった」と述べました。
こうした中、日本政府は、首脳会談にあわせてインフラ投資などを通じてアメリカ国内で雇用を生み出すことなどを目的とした行動計画を提案することを検討していましたが、トランプ政権の経済関係の閣僚の議会承認が遅れていることなどから、今回の会談では提案せず、閣僚の承認後に提案する方向で調整を進めることにしています。
-- NHK NEWS WEB