東日本大震災の津波で大きな被害を受けた岩手県の被災地では、宿泊施設の減少を補おうと、一般家庭に宿泊してもらう「民泊」を通じて観光客を呼び込もうという取り組みが始まっています。
岩手県の沿岸部では震災前、民宿やホテルなど213の宿泊施設がありましたが、このうち2割はいまも営業を再開できず、廃業した施設もあります。
県内の被災地では、宿泊施設の減少を補おうと、一般家庭に宿泊してもらう「民泊」を通じて観光客を呼び込もうという取り組みが始まり、このうち陸前高田市では、地元の社団法人「マルゴト陸前高田」が、去年から本格的に民泊を利用した観光客の受け入れに取り組んでいます。
去年の年末には、研修で訪れた東京の大学職員8人が、団体の紹介で民泊を利用し、受け入れ先の家庭で震災直後の状況を聞いたり、野菜の収穫を体験したりしていました。民泊を利用した女性の職員は「震災当時の話を聞いて、被災地を自分に関係ある場所としてとらえられるようになった」と話していました。
団体は、修学旅行の学生も呼び込もうと関東の高校に資料を送ったり、修学旅行を企画する旅行会社に売り込んだりしてPR活動を続けています。
さらに、観光客を受け入れる家庭の発掘にも力を入れ、震災直後にボランティアを泊めていた家庭などに働きかけた結果、160軒ほどから協力の約束を取り付けたということです。
こうした活動の結果、去年1年間に団体を通じて民泊を利用した人はおよそ830人にのぼり、ことしはすでに2100人分の予約が入っているということです。
全国では、民泊の利用者と近隣の住民が騒音などを理由にトラブルになるケースも起きていますが、この団体の受け入れ先の家庭は、事前に近隣の住民に観光客が来ることを伝えて理解を求めていて、団体によりますと、これまでのところトラブルなどは起きていないということです。
マルゴト陸前高田の永田園佳さんは「民泊を通じて地域の人に笑顔になってもらうだけでなく、市内に滞在してもらうことで地元にお金が落ちる仕組みを作りたい」と話していました。
-- NHK NEWS WEB