東京 世田谷区の一家殺害事件で、現場の住宅が、老朽化が進んでいることなどから取り壊す方向で警視庁が遺族と話し合いを進めていることについて、事件で亡くなった宮沢泰子さんの姉の入江杏さん(62)は、犯人が逮捕された時に事件を起こした理由を問うため現場を残してほしいとしています。
平成12年の大みそか、東京 世田谷区の住宅で、会社員の宮沢みきおさん(当時44)の一家4人が殺害されているのが見つかりました。
みきおさんの妻の泰子さん(当時41)の姉で、宮沢さん一家と2世帯住宅の隣どうしに住んでいた入江さんは「子育てのことなど妹がいちばんの相談相手で、一つの大家族のように助け合う大切な仲間でした。思い出の家は事件の現場になってしまい、19年間、心に刺さったとげのような存在です」と話しています。
入江さんは、5年前に現場に入った時のことが忘れられないといいます。
「子どもたちの色鮮やかなかわいい洋服がかかっていたり、お皿に入ったお菓子もそのままになっていて、生活の息吹と4人の気配があり、時間が止まっていると感じました。家に入るのはとてもつらかったですが、やはり現場があるからこそ肌で感じられるものがありました」と振り返ります。
そのうえで「警察は人手をかけてきちんと現場を保全してくれているとありがたく感じました。朝起きて『もしかしたらきょうは』と事件の解決を願わない日はありません。警察の方々には現場を見て、解決への思いを新たにしてほしいです」と話しています。
ことしに入って、警視庁から住宅の取り壊しを打診され、協議を続けてきましたが、今はまだ取り壊しを決断できないといいます。
「取り壊しの話を聞いた時、虚脱感のようなものと同時に、令和の新しい時代への移り変わりを感じて、つらかったです。来年で20年になるのを前に、どのように事件を解決に導いていくのか、新たな課題がつきつけられた気がして、4人によい報告ができるのか、不安が込み上げてきました。老朽化という事情は理解できないわけではないですが、4人がどうして亡くならなければいけなかったのか、何もわからないのが現状で、見逃している大切な何かがあるかもしれないのに、取り壊してしまって本当にいいのだろうか。簡単にいいとは言えません」と話しています。
入江さんは、老朽化について、どの程度、倒壊の危険があるのか、証拠保全の必要がなくなったと考える理由、なぜこの時期の取り壊しなのか知りたいといいます。
入江さんは「犯人を何としても捕まえて4人が一生懸命、暮らしていた場所を見せて、なぜひどい事件を起こしたのか、かわいい子どもまでどうして手にかけたのか聞きたい。そのためには4人の思い出がつまった現場をとどめておかなければいけないと思います。地域の方々にご迷惑がかかると言われると本当に申し訳ないと、揺れる気持ちもありますが、事件解決のため、もう少しお力添えくださいと、お願いするのが私の責任です。4人が発することができない声、流すことのできない涙のために、どうすればあの現場を少しでもとどめていけるのか考えていくことが大切だと思っています」と話しています。
-- NHK NEWS WEB