新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響をめぐり、安倍総理大臣は、衆議院予算委員会で、1929年に始まった世界恐慌の時よりも厳しい状況だとしたうえで、感染の収束に全力を挙げる考えを強調しました。
この中で、自民党の岸田政務調査会長は、5月6日までとなっている緊急事態宣言について、「どんな思いで、どんなことを重視し、宣言を発出したのか。これから先、宣言の延長、あるいは解除などについてどのように考えているのか」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は「1人でも多くの命を救い、守り抜いていくことに最重点を置いてきた。地方への感染拡大が見られており、長期戦を覚悟する必要がある。緊急事態をできるだけ早期に収束させるためにも今が最も大切な時期だ」と述べました。
公明党の斉藤幹事長は、現金10万円の一律給付について、「給付対象は、全国すべての人々へとなっている。今回の特別定額給付金の理念、全国すべての人々へという基本的な考え方、哲学を総理に伺いたい」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は「多くの方々に大変な苦労をしていただいている中で、連帯して乗り越えていくため、10万円を給付する方向に転換した。早い自治体では5月中のできるだけ早い時期に給付を開始してもらえるよう準備を進めている」と述べました。
立憲民主党の枝野代表は、PCR検査について、「『だるい、熱がある。でも、発熱が4日たっていないから、まだ後だ』という話が聞こえてくる。岡江久美子さんや志村けんさんへの検査が数日早かったら命が救われたか分からないが、検査能力はもっとあると、2か月前から述べていた。総理は責任を感じないか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「PCRの検査能力は、徐々に上げてきており、1日当たり2万件まで上げていきたい。その中で、医師がPCR検査をする必要があると判断した患者は検査が受けられるようにしていかなければならない」と述べました。
立憲民主党などの会派の玄葉元外務大臣は「IMF=国際通貨基金の見通しでは、2020年は世界大恐慌以来の最悪の景気後退を経験する可能性が非常に高い。どの程度のインパクトを持って、世界や日本経済の現状を見ているのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「直ちに景気刺激策を打てば効果が出るという状況ではない。むしろ、大恐慌のときよりも、ある意味では精神的に厳しい状況だ。しっかりと感染拡大を収束させ、その間にしっかりと経済、雇用、事業を支えていく。そして、収束が視野に入ってきた段階で、しっかりと経済をV字回復させていく」と述べました。
国民民主党の前原元外務大臣は、抗体検査について、「無症状者や軽症者もフォローしていく中で、抗体検査を行い、医療崩壊を防ぐとともに、実際どのぐらい感染者がいるのかの実態を把握することが大事だ」と指摘しました。
これに対し、安倍総理大臣は「PCR検査だけではなく、抗体検査も組み合わせながら、より正確な感染者の数、あるいは抗体を持っている人を把握するために、検査を相当数増やす必要もあるのではないかという指摘もある。感染症に対抗するうえでは、あらゆる手段をとり、抗体検査もしっかりと行っていきたい」と述べました。
安倍総理大臣は、感染者などへの差別や偏見について、「許すことのできない差別があるのも事実で恥ずべきことだ。誰もが感染するおそれがあり、日本においては差別はないと、世界に胸を張って言えるように全力を尽くしたい」と述べました。
また売り上げが減少した中小企業などに最大200万円を支給する「持続化給付金」について、上限額の引き上げを求められたのに対し、「日本経済のエンジンなので破損させてはならない。そういう状況が起こるということになれば、ちゅうちょなく、間髪を入れずに対応していきたい」と述べました。
さらに安倍総理大臣は、東京オリンピック・パラリンピックの延期にかかる追加経費について、「IOCに対して日本が費用を負うということについて私が約束した事実は全くない。直ちに抗議をして削除された。政府としては、開催国としての責任を果たしていきたい」と述べました。
安倍総理大臣は、WHO=世界保健機関への資金の拠出をめぐり、「今この危機にあって、WHOを中心に対応し、英知を結集していくということも求められていて、いまWHOの能力を削減するようなことは控えるべきだ。今回の事態が収束したあとに、十分な検証が行われるべきだ」と述べました。
補正予算案は、休日の29日も衆議院予算委員会で午前中、質疑と採決が行われたあと、直ちに衆議院本会議でも採決が行われ、参議院に送られる見通しです。
-- NHK NEWS WEB