想定される首都直下地震などの激しい揺れに襲われた場合、臨海部のコンビナートにどのような被害が起きるのか、大型の模型を使った初めての実験が行われました。対策をとらないと、地盤が横に大きくずれ動く「側方流動」という現象が起きて、大きな被害が出る可能性がある一方、護岸に部分的な対策をとれば、被害を大幅に減らす可能性のあることが確認されました。
実験を行ったのは港湾空港技術研究所や総務省消防庁の消防研究センターなどの研究チームで、兵庫県三木市の大型振動台、Eーディフェンスに、長さおよそ16メートル、幅およそ4メートル、高さおよそ5メートルの水槽をつくり、千葉県の実際のコンビナートをモデルに、8分の1の大きさでタンクや護岸を再現しました。
実験では、タンクの真下付近以外は対策をとっていないものと、護岸の下に石を敷き詰めるなどの部分的な対策をしたものをつくり、震度5弱程度の揺れを加えたあと、想定される首都直下地震を基に、震度7の揺れを加えて検証しました。
その結果、対策をしていない場合では、地盤が大きくずれ動いて複数の亀裂が入り、護岸では押し出された桟橋のボルトが吹き飛んで橋が落下しました。
実際には横方向に最大で1メートル以上ずれ動き、垂直方向には最大で1メートル以上沈下したことに相当し、パイプが断裂したり危険物が漏れ出したりする可能性もあるということです。
一方、護岸に対策をしたケースでは、沈み込みは40%程度に、横方向のずれ動きも70%程度に抑えられ、桟橋も落下しませんでした。
コンビナートの護岸対策は多額の費用がかかることが課題となっていますが、実験を行った研究機関によりますと、今回の部分的な対策では、すべてを改良する場合と比べて費用を8分の1程度に抑えられ、修復までにかかる期間も大幅に短縮できるということです。
港湾空港技術研究所の菅野高弘上級専任研究員は「対策をしていないと、影響が数か月に及ぶおそれもあり、企業活動にとっては致命的だ。今回、効果を立証できたので、具体的な対策に役立てていきたい」と話しています。
-- NHK NEWS WEB