北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の兄、キム・ジョンナム(金正男)氏が猛毒のVXで殺害された事件で、警察に拘束されていた北朝鮮国籍の男は3日午前、警察署を出て入国管理当局の施設に身柄を移されました。このあと国外退去処分になる見通しです。
この事件で、マレーシアの警察は北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル氏(46)を拘束して、事件との関連を調べてきましたがアパンディ司法長官は2日、関与を裏付ける十分な証拠が得られなかったとして、勾留期限の3日、釈放する方針を明らかにしていました。
クアラルンプール近郊の警察署に勾留されていたリ・ジョンチョル氏は日本時間の3日午前10時前、車に乗せられて出発し、入国管理当局の施設に身柄を移されました。
警察署から歩いて出てきたリ氏は防弾チョッキのような黒いベストを着ていて、武装した警察官らが警戒する中、車に乗り込みました。また、警察署の前には記者やカメラマンおよそ80人が集まり、リ氏を乗せた車などの車列が出発すると、辺りは騒然とした雰囲気となりました。
リ氏はこのあと、マレーシアに不法に滞在していたとして国外退去処分となり、北朝鮮に向けて出国する見通しです。
この事件では、キム・ジョンナム氏の顔に猛毒のVXを塗りつけて殺害したとしてインドネシア人とベトナム人の女2人が、1日、殺人の罪で起訴されました。
しかし、事件で主導的な役割を果たしたとされる北朝鮮国籍の4人の容疑者はすでに北朝鮮に帰国したと見られ、警察が事情を聴きたいとしている北朝鮮大使館の2等書記官や北朝鮮国営の航空会社の職員についても北朝鮮側の協力を得る見通しはたっていません。
唯一、拘束して取り調べていた北朝鮮国籍の人物が出国することで北朝鮮の組織的な関与を含め事件の解明を目指すマレーシア警察の捜査は今後、さらに難航すると見られます。
-- NHK NEWS WEB