アメリカのトランプ大統領の就任に向けて政策全般の立案の指揮に当たった政権移行チームの幹部が、NHKの単独インタビューに応じました。この中でこの幹部は、中東など7か国の人たちのアメリカへの入国を一時的に禁止した大統領令は、テロ対策を強化するためこれらの国の人たちの入国を再検討することが狙いだったとしたうえで、省庁間の調整がうまく進まなかったことが混乱につながったという見方を示しました。
この幹部は、去年7月から先月まで政権移行チームに所属していたアド・マチダ氏(53)です。
マチダ氏は、政権移行チームの中の政策実施チームの責任者として、およそ200人のスタッフを率いて、政策立案に当たり、トランプ政権の政策面の設計士とも言える人物です。
マチダ氏は2日、NHKの単独インタビューに応じ、新しい政権の政策の優先度を国民に示すため、200を超える大統領令を作成してホワイトハウスに提出したことを明らかにしたうえで、「苦労したのはメキシコとの国境の壁と、中東など7か国の人たちの入国禁止に関する大統領令だった。建設会社のエンジニアなどと話をして壁の予算を作ることがいちばん難しかった。また、入国禁止については、感情的になりやすい議論を、どのように冷静に考えて実行すべきなのか考えるのに苦労した」と述べました。
そして入国禁止の大統領令については、「われわれが考えていたことは、7か国の人たちについて、ある程度、入国を止めて対応を再検討しようということだった。この意味では失敗ではなかったと思う」と述べ、狙いはテロ対策の強化だったものの、政権が発足したばかりで、大統領令の実施に当たる省庁間の調整がうまく進まなかったことが、混乱の原因につながったという見方を示しました。
また、今後の政権運営については、「トランプ大統領が主に考えていることは、アメリカ経済をどう復活させるかということだ」と述べ、税制改革をはじめとする経済政策、医療保険制度改革、いわゆるオバマケアの見直し、そして、国内のインフラ整備の3点が最重点課題になるという見通しを示しました。
そして、トランプ大統領の「アメリカ第一主義」について、「アメリカが健全な状態にならないと世界のリーダーにはなれない。まずアメリカ国内を治し、それができれば世界のリーダーになれると考えている」と述べ、経済政策が効果を挙げた段階で、アメリカは国際社会の問題にも目を向けることができるようになると指摘しました。
一方、マチダ氏は、去年11月にニューヨークで行われた安倍総理大臣とトランプ氏との初めての会談で、準備に当たったことを明らかにするとともに、「トランプ氏は当時、日米関係にあまり関心がなかった。会談で話が弾んでよかった」と述べ、この会談をきっかけに両首脳の関係は緊密になったという見方を示しました。
そして、「トランプ大統領は安倍総理大臣に親しみを感じたようだ。日米関係からゴルフまで会話を交わし、うまく気持ちが伝わったという感覚を持っているのではないか」と述べ、首脳どうしの良好な関係は今後の日米関係のさらなる強化につながるという見方を強調しました。
そのうえで、トランプ政権としては、「日本に国際的な舞台で対等なパートナーになることを期待している。経済、安全保障、そして外交の分野で対等になってほしいという期待が強い」と述べ、トランプ大統領の下で、日本との関係は、伝統的に「特別な関係」と言われてきたイギリスとの関係より強まる可能性があると期待を示しました。
-- NHK NEWS WEB