ことし7月の一連の豪雨災害で全国で死亡した84人について、NHKが専門家とともに被災した状況を調べたところ、熊本県で死亡した少なくとも7人は、住宅ごと流されて死亡していたことがわかりました。流失するリスクのある住宅は各地にあり、専門家は、「早めに離れた場所へ避難すること重要だ」と指摘しています。
7月の豪雨で死亡した84人について、NHKは、防災が専門の静岡大学の牛山素行教授とともに被災した場所や状況を詳しく調べました。
災害別で見ると全体の80%を占める67人が川の氾濫などによる「水害」で死亡し、このうち半数以上にあたる45人が、自宅などの「屋内」で死亡していたことがわかりました。
さらにこのうちの少なくとも7人は、氾濫した川の水で住宅ごと流されて死亡していました。
この7人は、熊本県▽球磨村の2世帯5人と▽人吉市の1世帯2人で、いずれの住宅も球磨川沿いの「家屋倒壊等氾濫想定区域」と呼ばれる場所にありました。
この区域は、川が氾濫した場合に水の勢いが強く、建物がそのまま流されて倒壊するリスクがあるとして、国や都道府県が定めることになっています。
球磨川周辺ではこの区域の中にどれだけの住宅があったのか。
NHKは、国内最大手の地図会社・ゼンリンのおよそ9万棟の建物データを使って独自に分析しました。
その結果、球磨川沿いの10市町村では、「家屋倒壊等氾濫想定区域」の中に合わせて5057棟の住宅があることがわかりました。
市町村別に見ると、▽人吉市が2776棟で最も多く▽八代市が1348棟、▽球磨村が556棟、▽相良村が132棟などと多くの住宅が流失のリスクを抱えていることが浮き彫りになりました。
「家屋倒壊等氾濫想定区域」は、荒川や多摩川といった人口の多い首都圏の川を含む全国各地の川の周辺にもあります。
牛山教授は、「住宅が流されやすい場所では、2階以上に避難する『垂直避難』では家ごと流される可能性がある。
日頃からリスクを認識して、安全な場所に早めに移動する『立ち退き避難』を心がけてほしい」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB