福島第一原発事故の除染事業で、国が発注した契約額1億円以上の入札のうち、価格面の競争が行われないまま1つのゼネコンや共同企業体だけが参加して落札する「1者応札」が全体の70%以上に上っていることがNHKの取材でわかりました。環境省はおととし、この問題を解消するための改善計画を定めましたが、それ以降のすべての入札で「1者」のみの参加が続いていて、専門家は「ゼネコン各社が競争せずにすみ分ける構図になっている。除染には巨額の費用がつぎ込まれており、コストを安くするために競争入札を機能させる取り組みが必要だ」と指摘しています。
NHKは原発事故のあと、平成24年度から今年度にかけて環境省が発注した、契約額1億円以上の除染事業合わせて49件について入札の状況を詳しく調べました。
業者の選定は価格面などを競い合う競争入札で行われましたが、全体の73%にあたる36件が、1つのゼネコンや共同企業体だけが入札に参加して落札する「1者応札」だったことがわかりました。
入札は、原発周辺にある11の自治体ごとに別々に行われましたが、このうち8の自治体では、複数回にわたって行われた事業を同じゼネコンやその共同企業体が、ほぼ独占的に受注していました。
また、7の自治体では先行して行われたモデル事業を請け負ったゼネコンが、本格的な除染事業もそのまま受注していました。
予定価格に対する落札率は、全体の8割以上で95%を超えていて、このうち21件は落札率が99%を超えていました。
この問題を解消するため、環境省はおととし4月、「予算を適正に使うため競争性の確保に取り組む」などとした「改善計画」を定めましたが、それ以降に行われた12件の入札すべてで「1者」のみの参加が続いていました。
NHKの取材に対し、除染事業を受注したゼネコン各社は「入札には適切に対応している」などとコメントしています。
-- NHK NEWS WEB