東京電力の管内では今月16日の地震の影響で、一部の発電所の運転停止が続き、電力の供給力が減少していました。
こうした中、気温が下がって暖房使用など電力の需要が増え、電力の需給が極めて厳しい状況になるとして政府は21日夜、初めて「電力需給ひっ迫警報」を出しました。
22日は朝から電力の需要が伸びて管内の供給力に対する需要の割合を示す「使用率」は一時、100%を超えて、データの上では電力の需要実績が供給力を上回っている状況になりました。
22日夜から23日にかけて節電の呼びかけによって電力の需要が抑えられていることや、23日は太陽光による発電などが増え、供給力が上がりました。
政府は、安定供給できるめどがたったとして「電力需給ひっ迫警報」を午前11時で解除しました。
一方、地震の影響で運転を停止している発電所のうち福島県の広野火力発電所の6号機は、復旧にはおよそ1か月かかる見通しです。
発電所のトラブルが重なれば電力需給はすぐにひっ迫しかねない状況で、政府と東京電力は効率的に電気を使うよう協力を呼びかけています。
資源エネルギー庁「この1、2年は厳しい状況」
東京電力管内の「電力需給ひっ迫警報」を解除するに当たり、経済産業省と東京電力は23日午前10時半から記者会見を開きました。
この中で、資源エネルギー庁の小川要電力基盤整備課長は節電への協力について「家庭や職場で寒さのなか多大なる協力をいただき、ありがとうございました。厚く御礼申し上げたい」と述べました。
また、オンラインで会見に参加した東京電力の担当者は「私たちの信じられないような効果があった」と述べ、家庭や企業による節電が今回の電力需給ひっ迫を解消するのに大きな役割を果たしたという認識を示しました。
一方、今回の電力需給がたびたび厳しくなることについて資源エネルギー庁の小川課長は「発電所の建設計画などから中長期的に全国で電力の供給力の余裕がなくなっており、この1、2年は厳しい状況だ。必要な供給力を確保するためにどのような政策が必要か検討している」と述べました。
松野官房長官「引き続き電気の効率的な利用を」
松野官房長官は、23日午前の記者会見で「天候が回復し太陽光発電が増加していることや、気温の上昇で電力需要がきのうよりも下がると見込まれ『電力需給ひっ迫警報』は解除される。家庭やオフィス、産業界をはじめ、節電にご協力いただいた皆様に感謝申し上げる。今回の一連の対応について、今後、経済産業省でしっかり検証を行う」と述べました。
そして、先の地震の影響によって運転が停止している火力発電所について、早急に具体的な復旧の見通しを公表し、一日も早い復旧に努めていくと説明しました。
また、記者団から今後も電力需給のひっ迫の可能性があるか問われたのに対し「電力不足による停電が発生するおそれは解消したと聞いているが、引き続き、無理のない範囲で電気の効率的な利用に努めていただきたい」と呼びかけました。
節電 協力の効果は
東京電力は、今回の節電協力の効果を数値で示しました。
東京電力は当初、10%程度の節電を呼びかけました。
22日、午前8時台~午後2時台までは、目標の達成率が34%にとどまっていました。
このため、萩生田経済産業大臣が緊急記者会見を開くなどして、さらなる節電を呼びかけました。
午後3時台~午後11時台までには、目標の達成率が101%となり、午前8時~午後11時台までの最終的な達成率は72%となりました。
東京電力では、家庭でのこまめな節電や企業が自家発電の利用を増やしたことなどで、厳しい電力需給のひっ迫を解消することができたと説明しています。
警報解除のあとも電気の効率的使用に取り組む企業も
東京電力管内に出されていた「電力需給ひっ迫警報」は23日午前に解除されましたが、小売業界などでは、警報が解除されたあとも暖房の温度を下げるなど、効率的な電気の使用に向けた取り組みを続ける動きが出ています。
流通大手セブン&アイ・ホールディングスの傘下のスーパー「イトーヨーカドー」では、東京電力管内にあるおよそ100店舗で、警報が解除されたあとも、23日は店内の暖房の温度を通常より2度ほど下げて20度に設定し、照明の明るさをおよそ10%下げるなど節電対策を続けています。
また、グループのレストランチェーン「デニーズ」でも、東京電力管内にある店舗で暖房の温度を通常より1度下げ、23度に設定して営業を続けています。
家電量販店大手の「ビックカメラ」では、東京電力管内を中心におよそ30店舗で、売り場の半分ほどのテレビの電源をオフにしているほか、暖房を20度以下に設定し、電力の消費を抑えています。
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、千葉県内の2つのテーマパークについて、自家発電の設備の稼働を継続し、アトラクションなどで使う電力の一部を賄っているということです。
いずれも、電力の安定供給に向け、効率的な電気の使用などを通じて協力するためだとしていて、24日以降の対応については、政府の要請や電力の需給の状況などを踏まえて判断したいとしています。
専門家「電気ためることができる仕組みの整備急ぐ必要」
日本総研創発戦略センターの瀧口信一郎シニアスペシャリストは「今後、再生可能エネルギーを増やしながら、電力の安定供給を両立させるためには、太陽光の発電ができなかったときの仕組みも必要で、蓄電池や電気自動車の活用など、電気をためることができる仕組みの整備を急ぐ必要がある」と述べました。
一方、足元で火力発電所の供給力が低下していることを踏まえ「化石燃料は将来的に減らしていかないといけないが、水素やアンモニアも活用しながら上手に減らしていく必要がある。原子力についても、将来の人材育成も含めて、議論していくことが求められることになる」と述べました。
また、大規模な送電網の整備については「整備には大きなコストがかかる一方、ヨーロッパなどの大陸と比べると、得られるメリットには限界がある。構造的に整備が進みづらい現状がある」と述べました。