北海道の知床半島の沖合で遭難した観光船について、この船の補修にも携わったことがあり小型船の構造に詳しい業者は、船体が小型で、波が高くなる知床の海を航行するのには向いていなかったと指摘しています。
北海道で長年、造船や船の修理を行っている業者は遭難した観光船「KAZU 1」の塗装などの補修を去年の春行い、船体を確認したことがあるといいます。
この業者など複数の関係者への取材や船の所有者を記録した書類では、「KAZU 1」はかつて瀬戸内海で航行していた比較的古い船で、2005年に桂田精一社長より前の経営者の時に所有権が移転していました。
この業者によると、波の抵抗や縦揺れを減らすなどの効果がある「バルバス・バウ」と呼ばれる装置が後から取り付けられたということで、会社側が公開した写真でも確認できます。
一方、この業者は「KAZU 1」の船体部分が小型だったことが問題だったと指摘します。
「KAZU 1」は19トンで、ほかの小型観光船と比べてもあまり変わらないということですが、ほかの業者は船体の幅や深さを広げるなど安全性が高まる構造の船に更新していったのに対し、「KAZU 1」はそのまま使われ続けていたということです。
業者は「オホーツク海はうねりと波が混ざって流れが速く波も立つ。波が2メートルになってしまえば、観光どころではない」と述べ、知床の海には向いていなかったと指摘しています。
そのうえでこの業者は、船が浸水した背景に高い波に向かって航行する「迎え波」と呼ばれる状況で船首側に海水が流れ込みやすくなったことが考えられるとしています。
この船も含め、多くの小型船には船首側に入ってきた水を逃がす設備がないため、波が入り続け、船体が傾いた可能性があると指摘しています。
業者は「慣れた船長であれば斜めに走ったり、船首の倉庫を閉じたりといった対策をとる。しかし、そもそも荒天に走るような船でないのに出て行ったことがいちばんの問題だ」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB