ロシアの実業家が、ウクライナへの軍事侵攻を続けるプーチン政権を強く批判したところ、その翌日、創業した大手金融機関の保有株式を売却するよう政権側から圧力を受けたと、アメリカメディアのインタビューで明らかにしました。
侵攻に反対する世論が広がらないか、政権側が神経をとがらせていることをうかがわせています。
ロシア大手の民間銀行を創業したオレグ・ティンコフ氏は先月19日、インスタグラムに投稿し「このばかげた戦争で恩恵を受ける者は1人もいない。シンボルの『Z』の文字を書く愚か者もいるが、ロシア人の90%は戦争に反対している」と強く批判しました。
そして英語で「『西側諸国』の皆さん、プーチン氏の面目を保ちつつ虐殺を止められるような出口を与えて欲しい」と訴えました。
その後、先月28日、プーチン大統領に近いとされる富豪が率いる会社が、ティンコフ氏が保有する銀行のグループ会社の株式35%を取得したと明らかにしました。
アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、5月1日付けでティンコフ氏へのインタビューの内容を掲載し、それによりますと、投稿があった翌日にあたる先月20日、クレムリンの当局者が銀行の幹部に対して「あなたの株主の発言は歓迎されない。所有者が変わらなければ銀行を国有化する」と告げたとしています。
ティンコフ氏は、評価額よりはるかに低い価格で売却することを余儀なくされたとしたうえで「ロシアに将来があると信じることができない」と悲観しています。
ロシアでは、これまでも一部の富豪から軍事侵攻を批判する声は上がっていましたが、政権側としては、露骨な批判に対しては迅速に手を打った形で反対世論が広がらないか、神経をとがらせていることをうかがわせています。
-- NHK NEWS WEB