イギリスを訪れている岸田総理大臣は、ロンドンの金融街 シティーで講演し「日本経済はこれからも力強く成長を続ける」と強調し、日本への積極的な投資を呼びかけました。
また来月、新型コロナの水際対策をG7=主要7か国並みに緩和する方針を明らかにしました。
講演の冒頭、岸田総理大臣は、ウクライナへの侵攻を続けるロシアを非難したうえで「特に核兵器使用の脅威を現実のものとして考えなければならない状況となったことに特別な強い感情を抱く。私が被爆地、広島出身の政治家だからであり『広島の記憶』が平和を取り戻すための行動に駆り立てる」と述べ、国際社会と連携してきぜんと対応する考えを強調しました。
そして、今後の経済政策について「私からのメッセージは一つだ。日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資してほしい。『Invest in Kishida』だ」と述べ、日本への積極的な投資を呼びかけました。
そのうえで「日本はこれまでも、これからも世界に開かれた貿易・投資立国であり続ける」と強調し、▽新型コロナの水際対策を来月には、ほかのG7=主要7か国並みに円滑な入国が可能となるよう緩和する方針を表明したほか、▽イギリスのTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を強く支持する考えを示しました。
また、みずからが掲げる「新しい資本主義」について「ひと言で言えば資本主義のバージョンアップだ。官が呼び水となって課題とされる分野に新たなマーケットをつくり、民間の投資を集め官民連携で社会課題を解決するとともに力強く成長する。『二兎を追う』ことで持続可能な経済をつくる」と説明しました。
そして、▽「人への投資」▽「科学技術・イノベーションへの投資」▽「スタートアップ投資」▽「グリーン、デジタルへの投資」の4本柱に取り組む方針を示しました。
具体的には、貯蓄から投資への移行を大胆かつ抜本的に進めるとして、個人投資家向けの優遇税制「NISA」の抜本的拡充や国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など「資産所得倍増プラン」を進める方針を明らかにしました。
また、AI=人工知能、量子技術、バイオテクノロジー、デジタル、脱炭素の5つの領域で国家戦略を明示し、これに応じて研究開発投資を増加する企業に優遇措置を与える考えを示しました。
さらに「戦後に次ぐ第2の創業ブームを日本で起こしたい」と述べ、海外の大学やベンチャーキャピタルの誘致、それに、自社株を購入する権利「ストックオプション」の促進などを盛り込んだ、スタートアップ企業育成の全体像を5か年計画としてまとめ、横断的な司令塔機能を明確にすると明らかにしました。
また、気候変動問題に加え、エネルギー分野でのロシアへの依存度を世界全体で低減させるため、再生可能エネルギーの導入推進に加え、安全を確保した原子炉の有効活用を図ると説明しました。
そして、エネルギーの安定供給を確保しながら、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの目標を達成するため、今後10年間で、官民が協調して150兆円の新たな関連投資を実現する考えを示し、2030年までの包括的な政策ロードマップを策定すると説明しました。
また、新しい資本主義を実現するためには国際金融センターとしての日本の復活が必要だとして、2050年カーボンニュートラルを見据えて、グリーンボンド=環境債の市場などの整備を進めていくと強調しました。
一方、岸田総理大臣は「きょうロンドンを離れ日本に戻ればいよいよ夏の政治決戦、参議院選挙の公示まで50日を切る。現在のウクライナ危機、日本をめぐる安全保障環境の悪化、原油高などの経済危機を考えると政府の安定を損なうことは許されない。石にかじりついても勝ち抜き、きょう話したさまざまなプランを実行するための力を得る」と述べました。
最後に、イギリスのチャーチル元首相のことば「たこがいちばん高く上がるのは風に向かっている時だ。風に流されている時ではない」を引用したうえで「ウクライナ危機、権威主義的国家の台頭など暴風が吹く現代世界で、私は決して風に流されたりはしない。来年はわが国がG7の議長国だ。民主主義国家の旗手として新しい資本主義という理念を掲げながら、この暴風に真正面から向き合っていく」と決意を示しました。
-- NHK NEWS WEB