日本の先端技術がスパイなどを通じて海外に流出するのを防ぐため、警察庁は今年度から「経済安全保障室」を新たに立ち上げ、企業に対策を助言するなどの活動を本格化させています。国際的な緊張が高まる中、先端技術が軍事転用されれば安全保障上の大きな脅威になるとして、取り組みを強化していく方針です。
日本の先端技術をめぐっては、おととしから去年にかけてソフトバンクと積水化学工業の元社員がそれぞれ機密情報を不正に取得したり漏らしたりした罪で有罪判決を受けるなど、情報が中国やロシアなどに流出するケースが相次いで確認されています。
こうした事態を受けて、警察庁は今年度から「経済安全保障室」を新たに立ち上げ、事件の捜査や情報収集に加え、企業や研究機関に対策を助言する活動を本格化させています。
この中では、担当者が企業などに直接出向いて助言する「アウトリーチ活動」に力を入れていて、実際の事件をもとに海外の産業スパイやサイバー攻撃の手口を解説したり、機密情報を管理する方法を紹介したりして対策の徹底を呼びかけているということです。
また、全国の警察本部も専門の部署を設置するなどして情報収集を進めていて、最近では海外の企業から突然SNSで報酬を提示され技術指導を求められたとか、大学が経済安全保障上の懸念がある国の企業から共同研究を持ちかけられた、といった情報が寄せられているということです。
警察庁は先端技術の流出は国際競争力の低下を招くだけでなく、ウクライナ情勢などで国際的な緊張が高まる中、軍事転用されれば安全保障上の大きな脅威になるとして取り組みを強化していく方針です。
警察庁経済安全保障室の藤原麻衣子室長は「自分の会社にはねらわれる技術はないなどと楽観せず、当事者意識を持ってほしい。今後は大手企業だけでなく、高度な技術を持つ地方の企業などにも積極的に働きかけていきたい」と話していました。
-- NHK NEWS WEB