ソニーの社長や会長を10年にわたって務め、IT時代を先取りして国際派の経営者として知られた出井伸之氏が6月2日、肝不全のため亡くなりました。84歳でした。
1960年にソニーに入社した出井氏は、1995年に大賀典雄氏のあとを受けて異例の14人抜きで社長に就任しました。
インターネットの可能性に早くから着目した出井氏は「デジタル・ドリーム・キッズ」というキーワードを掲げ、ITをビジネスの中核にする経営戦略にかじを切りました。
テレビなどのハードウエアと映画や音楽などのソフトウエアを融合させたほか、「VAIO」ブランドでパソコン事業に再参入するなど、デジタル関連の事業を積極的に推し進め、10年にわたって社長やCEO、会長としてソニーの経営を担いました。
しかし、テレビ事業ではブラウン管から薄型テレビへの転換が遅れたほか、ウォークマンのブランドで人気を集めた携帯音楽プレーヤーの分野は、アメリカのアップルにリードを許すなど主力事業で苦戦が続きました。
2003年の業績の悪化による株価急落は、ソニーショックとも呼ばれました。
その後も業績が低迷し、出井氏は2005年に会長を退きました。
一方、出井氏は国際派の経営者としても知られ、各国の政治や経済界のリーダーが一堂に会するいわゆる「ダボス会議」などを通じて欧米の経営者らの幅広い人脈をつくったほか、アメリカの自動車大手のGM=ゼネラル・モーターズの社外取締役も務めました。
また、政府のIT戦略会議の議長を務めたほか、最近はコンサルティング会社を経営し、日本のベンチャー企業や若手経営者の育成に力を尽くしました。
-- NHK NEWS WEB