日銀出身で市場介入に携わった経験もある、JPモルガンチェース銀行の佐々木融 市場調査本部長は、円安の流れを変えるには、日本への投資を促す政策を実行するとともに、円安を生かすような政策も求められると指摘します。
Q.円安の根本的な原因は?
A.1つは貿易赤字の急拡大。
貿易赤字は今年1月から9月までで、すでに14兆円の赤字となり、過去最大の年間の赤字額である12兆円を上回っている。
2つ目の原因は、日本と海外各国との金利の差が拡大していること。
各国の中央銀行が積極的に利上げを実施している中で日本は金融政策を変更しておらず、金融政策の違いによる金利差の拡大が原因だと考えられる。
Q.円安が示すことは何か。
A.これだけ円が弱いのに誰も円を買わなくなっているところがポイントだ。
日本株はかなり割安になっているはずだが外国人投資家はそれでも買わない。
日本の全体的な弱さというものが原因となってこれだけ安くなっても日本にお金が流れてこないということがあるのではないか。
Q.円安に歯止めをかけるにはどうすればよいのか。
A.まずは金融政策の変更がある。
日銀が金融政策を正常化することである程度、円安の流れを止めることはできる。
もう1つ期待しているのはインバウンド。
海外からの訪問客が増えて日本で活発に消費すればある程度、円安の流れが止まる可能性はある。
ただ、根本的なところで円安の流れを変えるには日本への投資を促進したり、日本企業が日本に戻ってきて投資をしたりするようなことを後押しする政策がなければならない。
Q.日銀に求められることは?
A.金融緩和を続けているので急に態度を変えることは難しいが、日銀が発行する通貨の価値を安定させることは日銀の使命でもある。
物価が上がるところだけを注目するのではなく、円の対外的価値が下落し日本人の購買力を失っているところにも着目して、金融政策を行うことが重要だ。
円という通貨の価値を分析し、その結果をもとに金融政策の方向性を示すことが重要だ。
Q.日本はどうすれはよいのか。
A.投機筋が動いているからというのではなく、なぜ投機筋が集まってくるのか、なぜこんなに大きな為替の動きになっているのかという根本的なところに着目してそれを変えるようなことをやるべきだ。
日本にとって今、必要なことは円安を有効活用するような政策を行うことだ。
海外からのインバウンド客を引き付ける政策も重要だし、円安を生かして輸出できるものを輸出するということも必要だと思う。
あるいはこの円安を生かして、日本企業に日本に戻ってきてもらう政策も必要になる。
-- NHK NEWS WEB