平成25年12月の早朝、全国で「餃子の王将」を展開する「王将フードサービス」の京都市の本社前で、社長だった大東隆行さん(当時72)が拳銃で撃たれて死亡した事件で、警察は27日、福岡県にある特定危険指定暴力団・工藤会系の暴力団幹部、田中幸雄容疑者(56)が事件に関わった疑いがあるとして殺人などの疑いで逮捕状を取りました。
暴力団幹部はどのような人物なのか、また事件の構図はどこまで分かっているのか、
社会部の小山志央理記者が解説します。
(28日正午ニュースで放送したものです。動画はデータ放送ではご覧になれません)。
Q.警察が逮捕状をとった暴力団幹部はどのような人物か。
A.田中容疑者は、福岡の暴力団「工藤会」の2次団体に所属する暴力団幹部で、14年前(2008年)の民間を狙った銃撃事件の実行犯として服役中でした。関係者によると、その事件で逮捕された後に工藤会内部での役職が「専務理事」から、1つ上の「上席専務理事」に昇任していたといいます。
工藤会は、警察の徹底した取り締まりによって、北九州市の本部事務所が撤去されたほか、組織のトップが去年、死刑判決を受けるなどして弱体化が進んでいます。
こうした中でも、田中容疑者の所属する組は活発な活動を続けているとみられ、工藤会で上位の位置づけだといいます。
今回の事件で、被害者の大東社長は、至近距離とはいえ、胸や腹に4発の銃弾を受けていることから、暴力団関係者など銃の扱いに慣れた人物による銃撃とみられていました。
Q.事件の構図はどこまで分かっていて、捜査は今後、どのように進んでいくか。
A.今回逮捕される田中容疑者は、現場の「実行犯」の疑いがあるとみられています。また、容疑者は工藤会に所属していますが、大東社長や餃子の王将と、工藤会や暴力団組織との接点を示す決定的な証拠は、これまでの捜査では確認されていないということです。つまり、この事件は、どのような動機や背景があって、誰の指示によるものかといった「構図」が明確になっていないと言えます。その状況は今回の逮捕状の取得が、実行犯の疑いがある人物のみにとどまっていることからも伺えます。
捜査関係者によりますと、この9年間の捜査では、現場から証拠が出ながら、指示を出した人物など「構図」が明確にならなかったことで、逮捕を検討しながらも着手を見送ることが繰り返されてきたといいます。
こうした中で、事件を解明する上で警察が着目する要素のひとつが、事件の3年後に会社が公表した、第三者委員会による「調査結果」です。報告書では、会社と暴力団など反社会的勢力との関係はなかったと結論付けています。その一方で、会社が特定の関係者との間で「不適切な取り引き」を繰り返し、多額の損失を出していたことを指摘しています。そうした中で、この「不適切な取り引き」の解消に向け中心的に動いたのが、被害者の大東社長だったということです。
また第三者委員会とは別に、社内でも、役員などが中心となって調査報告書をまとめていて、その1か月後に、事件は起きました。このため警察は、こうした不適切な取り引きや、社内の調査結果がまとめられた時期と、事件との関連についても捜査を続けてきました。
警察が、実行犯の疑いがある人物の逮捕をきっかけに、関係者への捜査を進め、事件の構図や背景を明らかに出来るかが今後の焦点となると思います。
-- NHK NEWS WEB