福島第一原子力発電所の事故の賠償などのために、国が東京電力に交付している10兆円を超える資金について、会計検査院は東京電力からの負担金が計画どおり支払われていないとして、回収が長期化するという試算をまとめました。
福島第一原発の事故による賠償や除染などの費用として、国は13兆5000億円の国債を発行し、国などが設置した「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」を通じて、これまでに10兆2300億円余りを東京電力に交付しています。
交付した資金は、東京電力や電力会社からの毎年の負担金や、国が1兆円で引き受けた東京電力の株式の売却益などで回収することになっていて、昨年度末までに2兆2800億円余りが回収されています。
機構と東京電力が去年8月にまとめた最新の事業計画では、東京電力は「特別負担金」として2025年度までは毎年500億円を、それ以降は1000億円を支払うとされていますが、検査院が調べたところ、昨年度は東京電力の経営悪化を理由に、400億円に減額されていたことが分かりました。
検査院は特別負担金の額が仮にこのまま400億円で推移し、株式の売却益が計画を下回った場合などを想定して試算を行い、最悪の想定では、回収が終わるのが2064年度になるという結果が出ました。
5年前に行った試算よりも13年延びるという結果で、この場合金融機関から調達した資金の利払いで、国の財政負担がさらに増えることになります。
会計検査院は機構に対して、特別負担金を減額する際は国民に丁寧に説明するよう求め、東京電力に対しても収益力の改善などに取り組むことを求めました。
原子力損害賠償・廃炉等支援機構は「資源価格の高騰で電力各社の経営状況は非常に厳しいが、東京電力の収益体制を改善させながら、中長期的に賠償を進めていきたい」としています。
東京電力は「指摘内容についてしっかり対応していきます」とコメントしました。
-- NHK NEWS WEB