障害がある子どもの自立に向けた力を養う「放課後等デイサービス」で、人権への配慮に欠ける行為があったなどとして処分や指導を受けた事業所が、制度が始まってから5年間に、全国の32の都道府県などで、合わせて93か所にのぼったことが、NHKの取材でわかりました。
「放課後等デイサービス」は、民間などの事業所が、障害がある子どもを放課後や長期休暇に受け入れ、自立した社会生活を送るための力を養うもので、5年前に制度が導入されました。
利用料の9割が公費で負担されることや、大規模な設備投資が必要ないことから、企業などの参入が相次ぎ、事業所の数は、去年11月の時点で、全国でおよそ9600か所にのぼっています。手ごろな価格で支援を受けられる場として人気が高まり、14万3000人余りが利用しています。
東京・小平市の「ゆうやけ子どもクラブ」には、小学生から高校生まで、およそ20人が通っています。今月17日、子ども7人と近くの公園に野外活動に行きましたが、施設を出たとたん走り出す子や、気になるものに意識が集中して動こうとしない子もいて、安全の確保にとても神経を使うといいます。
おととし1月には、佐賀市で、自閉症の男子高校生が、野外活動で訪れた公園で職員が目を離した隙にいなくなり、およそ8時間後に保護されました。管理責任者は、「衝動的に走り出すことがある障害の特性や、個人的なこだわりを十分に理解していなかった」と説明したということで、その後は、事前に下見をして、危険な場所を把握することにしました。
一方、事業所の運営をめぐるトラブルや不正も相次いでいます。
NHKが取材したところ、制度が始まってから5年間に、人権への配慮に欠ける行為があったなどとして児童福祉法に基づく処分や指導を受けた事業所が、全国の32の都道府県と政令市、中核市で、合わせて93か所にのぼったことがわかりました。
内訳は、指定を取り消されたり、一定の期間、運営できなくされたりした事業所が40か所、改善勧告を受けた事業所が53か所でした。
大阪・堺市では、おととし7月、管理責任者の女性が、11歳から14歳の子ども3人を自宅に連れて行き、風呂場や犬小屋の掃除をさせていたことが明らかになりました。この管理責任者は、子どもの前で、ほかの職員を大声でどなり、泣き出す子や、食べたものを吐いた子もいたということです。堺市は、子どもへの虐待にあたると判断し半年間、新たな利用者の受け入れをできなくする処分にしました。
国は、一部の施設で、障害の知識や支援の経験がない職員が多いことが、サービスの質の低下を招いているとして、新年度から、職員の半数以上を専門的な知識や経験がある児童指導員や保育士とすることや、管理責任者が、障害がある子どもの支援を3年以上経験していることなどを義務づけることにしています。
一方で、障害に応じた手厚い支援をするには、多くの職員やスタッフが必要で、人件費がかさみます。現場からは、事業所の運営を維持しながら十分な対応ができるのか、不安の声も聞かれます。
「ゆうやけ子どもクラブ」代表の村岡真治さんは「知識があれば、一気に子どもがわかるかというとそうではない。国の基準だと、子ども10人に職員2人でよいことになっているが、うちは6人から7人でやっているので、手厚くしようとしたら運営が厳しくなる。子どもの内面にじっくり寄り添いながら活動することが評価されるような仕組みにしてほしい」と話しています。
一般社団法人日本発達障害ネットワークの市川宏伸理事長は「事業所の中で、非常に頑張っているところとそうでないところをきちんと分けて、国として支援していくことが大事なのではないか」と話しています。
-- NHK NEWS WEB