日銀の新たな総裁人事で、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する案に関連し岸田総理大臣は衆議院予算委員会で「『アベノミクス』を継承するかは、マーケットなどと対話を重ね、日銀として判断していくことになる」と述べました。
この中で、岸田総理大臣は、日銀の新たな総裁に元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する案を14日、国会に提示したことに関連し「アベノミクス」の継承が念頭にあるのかどうか問われたのに対し「『アベノミクス』はデフレでない状態を実現するなど大きな成果もあげてきた。それをしっかりと成長と分配の好循環につなげていきたいと思っており、政府の方針も念頭に置きながらマーケットの状況などもしっかりと判断し、対話を重ねながら、日銀として適切な行動・手法を判断していくことになる」と述べました。
そのうえで、2%の物価目標を掲げる政府と日銀の共同声明について「内容を変える、変えないと言及するのは時期尚早だ。まずは新しい体制のスタートを実現したあとの話だ」と述べました。
自民党の石破元幹事長は、防衛力の抜本的強化に向けて政府が取得を計画しているアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」をめぐり「トマホークは多くの燃料を積まねばならないし速度も遅いので、本当に反撃能力として有効なのか」と質問しました。
これに対し、岸田総理大臣は「わが国に侵攻している艦艇や上陸部隊などに対して、脅威の圏外から対処する『スタンド・オフ防衛能力』を抜本的に強化する考え方に基づいて導入を考えている。導入するトマホークは最新型で迎撃を回避する飛しょうも可能だ」と述べました。
公明党の中野洋昌氏は、原発の運転期間を実質的に延長する政府方針をめぐり「先日の原子力規制委員会では1人の委員から反対意見が出ていて、本当に大丈夫なのかという不安の声もある。国民の不安を払拭(ふっしょく)するようしっかり説明すべきだ」と求めました。
これに対し、岸田総理大臣は「安全性が確認されなければ運転が出来ないという仕組みが大前提なことは全く変わりない。政府の考え方が国民に必ずしも十分伝わっていないという指摘については、真摯(しんし)に受け止め、丁寧に説明していく」と述べました。
立憲民主党の西村代表代行は、同性婚の制度を導入した場合「社会が変わってしまう」とした今月1日の岸田総理大臣の答弁について「総理は『ネガティブな意味ではない』としているが、やはりネガティブだ。例えば社会が『豊かになってしまう』はおかしいが『混乱してしまう』とか『すさんでしまう』などネガティブな動詞をつけるとしっくりくる。答弁は撤回すべきではないか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「私の使ったことばがネガティブに受け取られたとしたならば、反省しなければいけない部分があろうかと思う。ネガティブかポジティブかは別として、変わってしまうという結果をもたらすから、議論を深めたいということを申し上げた」と述べました。
一方、選択的夫婦別姓制度の導入をめぐり「私自身は反対とは一度も申し上げたことはない。国民の幅広い理解につなげるために議論を深めることが重要だということを申し上げている」と述べました。
日本維新の会の杉本和巳氏は、衆議院の解散・総選挙をめぐり「防衛費増額で増税するようなことになった場合には解散もあるのかということを確認したい。現在、総理の頭の中に『解散』という文字が片隅にでもあるのか」と質問しました。
これに対し、岸田総理大臣は「まさに歴史的な転換点において果たさなければいけない政治の責任が目の前にたくさんある。責任を果たしていく中で、国民のご判断をいただく時期を考えていかなければならないが、今時点で頭の中に具体的な時期は全くない」と述べました。
国民民主党の前原元外務大臣は、台湾有事をめぐり「中国は尖閣諸島を台湾の一部とみなしていて、台湾への侵攻を行う際に尖閣諸島を除外するとは到底考えられない。台湾有事は日本有事になるという認識でよいか」と質問しました。
これに対し、岸田総理大臣は「個別具体的に判断しなければならない課題だ。憲法、国際法、国内法の範囲内で、国民の命、暮らしに影響を及ぼすような事態に対して政治としてしっかり責任を果たしていく」と述べました。
共産党の笠井亮氏は、原発の運転期間を実質的に延長する政府方針についての原子力規制委員会の議論をめぐり「おととい、60年を超える運転を認めるという新しい制度を全会一致ではなく異例の多数決で決定した。委員からは『外からせかされて議論した』という声が上がっており、岸田政権が今国会に法案を提出するためにせかしたのではないか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「4か月余りで9回にわたって丁寧に議論を行い、先週、反対の委員が1人いたことから、採決せず、今週、改めて合議制のもと多数決で決定した。山中委員長は法案のスケジュールを念頭に置きつつも独立性が損なわれるようなことがあったとは考えていない旨の発言をしたと承知しており、結論を急がせたということはない」と述べました。
れいわ新選組の多ケ谷国会対策委員長は「インボイス制度」について「導入することで事務作業や税理士費用などに伴う金銭負担が大変で、零細企業やフリーランスには過酷のみならず、免税事業者以外の負担も増大する。何が何でもことし10月にスタートさせるのか」とただしました。
これに対し、岸田総理大臣は「零細企業や個人事業主の懸念については、さまざまな声に耳を傾け、政府一体で連携して丁寧に課題を把握しながら、きめ細かく対応していく。10月の制度の円滑な実施に向けて万全の対応を図っていく」と述べました。
一方、岸田総理大臣は東京オリンピック・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件について「事実であれば、まことに遺憾であり、仮に国費が過大に支出されている場合には、返還を命じるなど法令などにのっとって厳正に対応する」と述べました。
-- NHK NEWS WEB