経営不安にさらされていたスイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」が発行した「AT1債」と呼ばれる特定の社債が無価値になるとされた問題で、金融庁は、今のところ国内の金融機関への影響は限定的だとみています。
「クレディ・スイス」は、「AT1債」という特定の社債を発行して世界の機関投資家などに販売していましたが、同じスイスの金融最大手の「UBS」に買収されることに伴って日本円でおよそ2兆2000億円に相当する「AT1債」が無価値になると発表しました。
これに関連して、資産運用会社の「野村アセットマネジメント」は今月17日時点で、「AT1債」を組み込んで運用している投資信託が31本あると発表しました。
金額にすると合わせておよそ5億5000万円で、これらの投資信託の中に「AT1債」が占める割合は最も高いもので0.79%だとしています。
野村アセットマネジメントは「影響については慎重に注視しながら運用を行ってまいります」とコメントしています。
一方、金融庁は、「AT1債」について、今のところ国内の金融機関から大きな損失が出たといった報告はないとし、影響は限定的だとみています。
ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり研究理事は、「これまでAT1債は、損失が発生することはあまり意識されてこなかったが、今回、リスクを伴うということが強く意識された。このリスクをめぐる市場の動揺が金融システムに波及しないか、懸念される」と話しています。
-- NHK NEWS WEB