北海道の知床半島沖で観光船が沈没した事故から23日で1年がたちました。
今も家族2人が行方不明になっている北海道十勝地方の男性は、約1年ぶりに斜里町ウトロ地区を訪れ「事故が起きた時から時間は止まったままで、1年がたったという気はしない」と現在の心境を語りました。
十勝地方に住む50歳の男性は、元妻と当時小学2年生だった息子が観光船に乗船していて、いまも行方が分からないままです。
息子の通っていた小学校では、新年度以降も在籍させる対応をとり、今月、3年生に進級したということです。
男性の自宅には来週、新しい教科書も届けられるということで、事故から1年を前に自宅での取材に応じた男性は「時間もたって生存の可能性は厳しいと分かってはいるが、今もどこかで生きてくれているのではないかという気持ちがある。息子を進級させてくれたことはうれしいし、ありがたいことだと思った」と話していました。
また、ことし1月には、学校から、息子が以前授業で描いた自画像も届けられたということで「きっと自画像だから、一生懸命、鏡で自分の顔を見ながら描いたんだろうな」と話していました。
事故から1年となる23日、男性は行方不明者の捜索にあたっているボランティアグループの報告会に参加するため、約1年ぶりに斜里町ウトロ地区を訪れました。
男性は「来月も捜索してくれるという話があり、その時に希望があれば花や飲み物を知床半島の岬に持って行ってくれると話してくれた。その話がとてもうれしくて、本当の意味で家族に寄り添ってくれていると感じた」と話していました。
一方、23日は地元の斜里町などが主催する追悼式も開かれましたが、男性は参加を辞退しました。
その理由について男性は「まだ2人が行方不明になっているままで式に出席するのは、自分としては少し違うという思いがあった。本来であれば事故を起こした運航会社が式を主催するべきで、そこにも違和感を覚えている」と話しました。
約1年ぶりに現地を訪れましたが、今回は初めてウトロの港に立ち寄り「2人はこの場所からきれいな風景を楽しみにして出航したんだと思った。こんなことになるなんて思ってもいなかっただろうと思うと、涙があふれてきた」と話していました。
そして「事故が起きた時から時間は止まったままで、1年がたったという気はしない。まだ誰も責任を取っていない状態なので、運航会社や監督する立場にあった国はきちんと責任を取ってもらいたい」と現在の心境を語りました。
-- NHK NEWS WEB