東京 渋谷区の複合施設に展示されていたネコのオブジェが無断で異なるデザインに変更されたのは「著作権の侵害にあたる」として作者がオブジェを所有する企業に抗議していたことが分かりました。
その後、オブジェは作者に返還され、企業側は配慮を欠く対応だったとして謝罪したということです。
都内に住む現代美術作家の吉田朗さんは、大手不動産会社が渋谷区内に開発した複合施設のレストランに展示するオブジェの制作を依頼されました。
吉田さんは招き猫をモチーフとしたオブジェを完成させ、2020年から展示されていましたが、その後、ネコのデザインが突然、黒を基調にしたものに無断で変更されたということです。
吉田さんはSNSで初めてこのことを知り、オブジェを所有する企業に対して「作者に無断で姿を変えるのは著作権の侵害にあたる」と抗議したということです。
その後、オブジェは吉田さんのもとに、変更されたデザインのまま、返還されました。
吉田さんは「このネコのオブジェは海外のお客さんを意識して、日本的なイメージで赤と白を基調としました。設置される場所が渋谷駅のハチ公像と対角になるので、このネコも愛される作品になってほしいという思いを込めました」と振り返ります。
そのうえで、デザインが無断で変更されたことについては「なぜこんなことをするのかショックでした。思いやコンセプトを含めて全く違うものにされて大きく踏みにじられました。美術作品に対する最低限の理解と敬意があればここまでの事態にはならなかったはずです」と話していました。
オブジェを所有していた三井不動産は、アーティストへの配慮を欠く対応だったことを認めて、謝罪したということです。
芸術作品と著作権法に詳しい武蔵野美術大学の志田陽子教授は「アートにはそれを購入した人にも、無断で改変することはできない著作者人格権という考え方がある。特に今回は作品を第三者の目に触れる場所に展示していたことに問題があった」と指摘しています。
-- NHK NEWS WEB