ロシア国防省との確執を深め、首都モスクワに部隊を進めていた民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏は、部隊を引き返し、本格的な武力衝突は回避されたとみられます。
プリゴジン氏はなぜ一転して部隊を引き返したのか?
狙いはどこにあったのか?
プーチン政権やウクライナの戦況への影響は?
ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんの解説です。
(6月25日NHKニュースで放送された内容です。動画は5分18秒。データ放送ではご覧になれません)
防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が今回の行動を起こした狙いについて、「ロシア国防省はワグネルなど民間軍事会社に契約を結んで事実上、指揮下に入るよう命じていた。しかし、プリゴジン氏は国防省との契約を拒否し、ワグネルの存続とみずからの政治的な影響力を維持したいという狙いがあったのではないか」という見方を示しました。
一方、プーチン大統領は当初、「処罰が避けられない」と演説していましたが、ロシア大統領府の報道官は24日夜、「誰も罪に問われないだろう」と述べました。
この変化について兵頭氏は、ワグネルがウクライナ東部のバフムトで一定の戦果を得て、プーチン大統領の面目を保ったことや、政治的な言動を強めるプリゴジン氏に対して、ロシア国内でも一部で支持が高まっていたことから、プーチン大統領にとってもプリゴジン氏を真正面から排除することが困難だったためと分析しました。
その上で「苦肉の策としてプリゴジン氏をベラルーシに出国させ、ロシア国内で事実上、罪に問われないようにするという落としどころを探ったのではないか。ベラルーシのルカシェンコ大統領はプリゴジン氏と20年来の付き合いがあったのでプリゴジン氏も受け入れが可能だったのだろう」という見方を示しました。
また、今回の出来事がプーチン政権に及ぼす影響については、「治安を維持しながら人気を高めてきたプーチン大統領が、十分にコントロールできなかったという意味において、プーチン政権にとって一定のダメージになった」として、政権にとって痛手になったと指摘しました。
また、プーチン政権がウクライナへの軍事侵攻を正当化するために主張しているNATO=北大西洋条約機構からの脅威などについて、プリゴジン氏は「全く違う理由で、いわゆる特別軍事作戦が開始された」と否定しました。
これについて兵頭氏は「プリゴジン氏が戦争の大義を真正面から否定した。これもウクライナで戦争を行う上で、ロシア国内で否定的な影響を与える可能性もあるのではないか」と分析しました。
-- NHK NEWS WEB