ウクライナ政府は、ロシア軍が占拠するザポリージャ原子力発電所からロシア側が退避する動きが見られるなど、原発へのテロを計画していると主張し、周辺の地域で原子力事故に備えた大規模な訓練を行うなど警戒を強めています。
ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所について、6月30日にウクライナ国防省の情報総局は、原発を占拠するロシア側が施設から退避する動きがみられると指摘しました。
さらに、ロシア国営の原子力企業「ロスアトム」と契約を結んだウクライナ人の従業員に対し、7月5日までに退避するように通告したことなども明らかにしました。
ウクライナ政府は、ロシアが原発へのテロを計画し、施設に地雷を仕掛けているとも主張していて、エネルギー省は、原子力事故に備えて、南部のザポリージャ州やミコライウ州、ヘルソン州、そして東部のドニプロペトロウシク州で、軍や専門家などが参加した大規模な訓練を行ったと発表しました。
ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、地元メディアに対し「原発へのテロ攻撃は民間人に対する核兵器の使用とみなされる。世界がどのような反応を示すか注視するつもりだ。こうした事態が起きることを防ぐため、あらゆることを行う」として、国際社会も警戒する必要があると訴え、ロシア側を強くけん制しました。
これに対し、ロシアのラブロフ外相は30日、「ウクライナ側の主張は全くのうそだ」などと改めて否定しています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は30日、原発へのテロは、ロシア軍にも深刻な影響となりかねないと指摘し、「ロシア軍が意図的な『事故』を引き起こす可能性は依然として低いが、放射線の脅威を利用し、ウクライナの反転攻勢や欧米の軍事支援を抑えようとしている可能性が高い」と指摘し、7月11日に始まるNATO=北大西洋条約機構の首脳会議に向けて、ロシア側が揺さぶりを強めている可能性があると分析しています。
-- NHK NEWS WEB