軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして逮捕・起訴され、初公判の直前になって起訴を取り消された横浜市の会社の社長などが、国と東京都に賠償を求めている裁判で、捜査から起訴までを担当した検察官が証人として出廷し「起訴すべきと判断したことは間違っていないと思うので、謝罪の気持ちはない」と述べました。
横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の社長など幹部3人は3年前、生物兵器の製造などに使われるおそれがあるとして輸出が規制されている機器を不正に輸出した疑いで警視庁に逮捕されましたが、起訴後の再捜査で機器が規制の対象にあたらない可能性があることがわかり、初公判の直前になって起訴を取り消されました。
3人のうち1人は勾留中に病気で亡くなっていて、社長たちは「立件ありきの不当な捜査で精神的な苦痛を受けた」として国と東京都に賠償を求めています。
5日は、当時、東京地方検察庁で捜査から起訴までを担当した検事が証人として出廷し、「警察から出された証拠を見ると経済産業省は機器が規制の対象に該当する可能性が高いと回答していたし、3人の調書を読んでも容疑をおおむね認めていたことなどから逮捕状の請求を認め、起訴した」と説明しました。
また、検察の取り調べに対し会社側の複数の関係者が規制の要件に該当しない可能性を示唆していたことについて「認識はしていたが、抽象的な説明だったので補充捜査の必要性はないと判断した」と証言しました。
原告側の弁護士から長期間の勾留や、その間に1人が亡くなったことについて謝罪の気持ちがあるか問われると「当時、起訴すべきと判断したことは間違っていないと思うので謝罪の気持ちはない」と述べました。
一方で、起訴取り消しとなったことについては「検察官として真摯に受け止めるべきだと思う」と話しました。
この裁判では先月30日の法廷で、捜査を担当した警視庁の警察官の1人が事件について「ねつ造かもしれない」と述べ、捜査の進め方に疑問があったという認識を示しています。
-- NHK NEWS WEB