東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、宮城県内のピアノの調律師が「福島県内の取り引き先の顧客が避難して売り上げが減った」として東京電力に損害賠償を求める訴えを起こし、仙台地方裁判所は、17日、「原発事故後、一定期間は収益をあげることは困難だった」と認め、東京電力に対して80万円余りを支払うよう命じる判決を言い渡しました。
宮城県村田町のピアノの調律師の男性は、福島県南相馬市で楽器店や音楽教室を展開する会社を取り引き先にしていましたが、「原発事故の影響で会社の顧客が避難を余儀なくされ、調律の依頼が減った」として4年前、ほかの宮城県内の4つの事業者とともに東京電力に対して損害賠償を求める訴えを起こしました。
17日の判決で仙台地方裁判所の高取真理子裁判長は「原発事故後、一定期間は収益をあげることは困難だったと認められる。事故後およそ1年間は因果関係がある」として、東京電力に対して男性に80万円余りを支払うよう命じました。
男性と一緒に訴えを起こした4つの事業者は、去年3月、東京電力が賠償金を支払うことで和解しています。
原発事故をめぐっては、賠償を迅速に進めるために国の紛争解決センターに申し立てる枠組みがありますが、男性はここでの申し立ては行わずに裁判に訴えていました。
原告でピアノの調律師の小原武郎さん(60)は判決後の記者会見で、「同じように被害を受けている人は弁護士に相談するなどして諦めないでほしい」と話していました。
東京電力は、「当社の事故により福島県民の皆様を始め多くの皆様にご迷惑をおかけしていることについて改めて心からおわびします。判決内容を精査したうえで引き続き真摯(しんし)に対応します」というコメントを出しました。
-- NHK NEWS WEB