香港は、イギリスから中国に返還されて、ことしで20年を迎えますが、今、学業のストレスが原因による子どもの自殺が深刻な社会問題になっています。
小学生から大学生までの自殺は、去年8月までの1年間で33人。9月からの新たな年度でも、すでに26人に上ると見られます。
背景には、中国本土との一体化があります。
大学には、返還当時はほとんどいなかった中国本土の優秀な学生が流入し、競争は厳しくなり、卒業したあとも香港出身の学生は銀行や保険会社といった高収入の企業に以前より入りにくくなっています。
また、中国本土からの巨額の投資マネーによって住宅価格は過去10年で3倍に急上昇。家賃や物価の高騰を招き、市民生活を圧迫しています。
「子どもが、将来、社会から取り残されないようにするにはエリートに育てるしかない」
こうした強い危機感から、親や教師は子どもに小学校低学年から毎日、数時間の宿題を課し、習い事も複数、掛け持ちさせるのが一般的となっています。
こうしたなか、子どもの気持ちを大人たちに伝えたいと、芸術系の高校に通う高校生12人が自殺をテーマにした劇団を結成しました。メンバーのほとんどが過去に自殺を考えたことがあり、自分たちの経験をもとに議論を重ね、脚本を書きました。
劇では、勉強や進路を押しつけてくる親や教師に自分の気持ちを理解してもらえず、孤独にさいなまれる子どもたちの内面が描かれています。
メンバーの1人は「自分の子どもを傷つけていないか親たちに一度考えてほしい、との思いで劇をつくりました」と話していました。
この劇は口コミで広がり、高校生たちの意見が政府への提言にも反映されるなど、香港で静かな広がりをみせています。
-- NHK NEWS WEB