過労のため自殺した、電通元社員の高橋まつりさんの母親の幸美さんが初めてテレビのインタビューに応じ、まつりさんとの思い出や働き方への意識を変えてほしいという思いを語りました。
電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)は、おととし12月25日、クリスマスの朝に自宅の建物から飛び降りて命を絶ちました。
母親の幸美さんは、今回初めてテレビのインタビューに応じ、まつりさんが学生時代に愛用していた、携帯電話のアクセサリーのぬいぐるみを手に思いを語りました。
まつりさんについて「小さいころから明るくて元気で、ユーモアもあって知的好奇心、知識欲がすごかったです。学生時代に塾に通えない子どもたちを支援する活動をしていたほか、ラクロス部のサークルに入り、友達皆にかわいがられていました」と振り返りました。
まつりさんの死は過労が原因の労災と認定され、幸美さんは記者会見を開いて問題を明らかにしました。
記者会見した理由について幸美さんは「こんなに頑張ってきた子が、黙って会社に殺されたままにしておくわけにはいかないと思ったし、実名公表もしようと決心しました。社会のためでもありますが、今さら遅いですけど、娘のためであると。あの時、東京に行って私が抱きしめて助けてあげないといけなかった私のせいでもある」と涙ながらに語りました。
まつりさんは試用期間が終わり、社員として正式に採用されたおととし10月以降、深夜に及ぶ残業が続くようになり、友達などが見ることができるツイッターで、仕事のつらさを訴えていました。
幸美さんは「10月に本採用されて、これまで午後10時までに帰っていた際限がなくなり、『怖い』と話していました。会うと『眠い』とか『仕事が終わらない』と話していましたが、心配させるからと、私にはあまりつらいとは言わなかったので、本当につらかったんだなとわかったのが、友人とのメールのやり取りを見てのことでした」と話します。
そして、電通に対して、「体質を本気で変えてほしい。今まで変えてこなかったのは社長の責任、社員全員の責任だと思います。月100時間の残業が当たり前だと思っている人がたくさんいる。業界全体の問題で、日本のほかの業界も同じように抱えている問題だ」と訴えました。そのうえで、「日本社会の成長があるのは、サービス残業をしてきたからだと思っている人の意識を変えるのは難しいが、日本人の意識が変わらなければいけない。本当につらいと思っている人たちは弱いのではない、亡くなった人は弱いからではないということを皆で考えてほしい。一企業だけでなく、日本全体の問題だと思う」と話しました。
そして、最後にまつりさんが大学時代、中国に留学した時の写真を見て、「時が止まったようで、相変わらず繰り返し、夢の中に生きているような感じですね。彼女のことを遠い存在だと感じられない。母親だから、まだ記憶がリアルというか、ついこの間まで元気に一緒に山登りしたり、抱きしめ、ハグしたりしていた記憶があるので」とまつりさんへの思いを語りました。
-- NHK NEWS WEB