全国のエレベーターで整備不良などによる事故が後を絶たないことを受けて、建物の所有者や管理者を対象にした維持管理のための国の初めての説明会が開かれ、11年前のエレベーター事故で息子を亡くした市川正子さんが保守点検の重要性を訴えました。
この説明会は国土交通省が25日と26日に開き、自治体やマンション管理会社の担当者などが参加しました。
説明会には、11年前の平成18年、東京・港区のマンションでシンドラーエレベータ社のエレベーターが扉が開いたまま突然上昇した事故で、当時高校2年生だった息子の大輔さん(当時16歳)を亡くした市川正子さんが講演しました。
11年前の事故は、設計上の問題に加えて、維持管理が不十分だったことも事故の要因だったと指摘されていて、市川さんは、製造会社がエレベーターの保守会社に点検のマニュアルを渡していなかったと説明したうえで、「十分な情報で保守点検をしていたら、防げた事故だと思います。夢も希望もすべて奪われてしまった憤り、悔しさ、悲しみ、無念の思いは絶対に消えることはありません」と述べて、適切な維持管理の重要性を訴えました。
国土交通省によりますと、平成18年以降、国の調査部会が重大事故として報告書をまとめた17件のエレベーター事故のうち15件で、部品の欠陥などに加えて、維持管理にも問題があったと指摘されたということです。
国土交通省の担当者は、新たに作成した維持管理の解説書を基に、エレベーターの計画的な修繕予定を作っておくことや、マンションの管理組合も、保守管理会社との契約内容を把握しておくことが重要だと指摘しました。
説明会に参加した市川さんは「エレベーターの維持管理は製造者、保守業者、管理業者、それに所有者すべてにとっての問題だと考えています。今後、維持管理の重要性が広く浸透するように願っています」と話しています。
-- NHK NEWS WEB