アメリカのトランプ大統領がパリ協定から脱退する方針を決定したと発表したことについて、専門家は「極端な判断をしたことは非常に残念だが、世界全体で対策を進めるという機運はビジネスでも醸成されている」と述べ、温暖化対策を重視する世界のビジネスの流れは変わらず、トランプ大統領も現実に直面し態度や方針を変える可能性があると指摘しています。
地球温暖化対策の国際交渉やアメリカの環境政策に詳しい電力中央研究所の上野貴弘主任研究員は、トランプ大統領がパリ協定から脱退する方針を決定したと発表したことについて「脱退という極端な判断をしたことは非常に残念だと言わざるをえない。協定について再交渉すると言っていたが、具体的にどういった交渉をするのかについては言及がなく、選挙戦の際に工業地帯や炭鉱の労働者に向けて発した公約を果たすことが目的だったとも考えられる」と分析しています。
そのうえで、この数年、世界の投資家が環境問題に取り組む企業に積極的に投資する動きが見られることから、「世界全体で温暖化対策を進めていくという機運がビジネスでも醸成されているので、温室効果ガスの排出量を減らすという流れはアメリカ一国の判断で変わるものではない」と述べ、温暖化対策を重視する世界のビジネスの流れは変わらず、トランプ大統領もその現実に直面する可能性があると指摘しています。
さらに、パリ協定の規定で発効から3年後の2019年11月までは脱退を通告できないことから、その間にトランプ大統領が態度や方針を変えることも十分ありうるとしています。
そして、今後、日本政府に求められる対応については、「今回の発表をあまり衝撃的に受け止めないようにしたうえで、パリ協定のルール作りに参加するよう促したり、考えを改めるように説得したりして現実的な解決策を探るとともに、パリ協定の排出削減の目標達成に向けて引き続き努力することが重要だ」と話しています。
-- NHK NEWS WEB