「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐって、与野党の緊迫した攻防が続いています。一般市民も捜査や処罰の対象になるのか、監視社会が現実化するおそれはないのか、論点をまとめました。
「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐっては、犯罪と関係のない一般市民が捜査や処罰の対象になるかが論点の1つとなっています。
政府は、対象になるのは「組織的犯罪集団」で、その集団と密接に関連した行動をとる人も含まれるものの、一般の企業や市民団体などは対象にならないと説明しています。
これに対して、日弁連=日本弁護士連合会は、集団の定義があいまいで、テロ組織や暴力団だけでなく、一般市民も捜査の対象になる懸念があると批判しています。
市民からも、アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設に対する反対運動や、脱原発の活動などへの影響を懸念する声が上がっています。
また、どのような犯罪が法案の対象になるかをめぐっても、議論が分かれています。
政府は、組織的犯罪集団とは関わりが薄いと考えられる犯罪を対象から除外し、277に絞ったとしています。
これに対して、国連の人権理事会でプライバシーの権利を担当する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏は、277の犯罪の中にはテロや組織犯罪と無関係なものも広く含まれるとして、「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度な制限につながる可能性がある」と懸念を示しています。
さらに、犯罪の「準備行為」が行われたケース以外は処罰しないという政府の説明をめぐっても、市民が行う「日常の行為」と「準備行為」をどう区別するかが議論になっています。
政府は、国会の答弁で、犯罪集団が関係先を下見する場合を例に挙げ、「花見であればビールや弁当を持っているのに対し、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っている」などとして、客観的な状況をもとに区別できると説明しています。
一方、日弁連は、預貯金を引き出すような行為も「準備行為」に含まれているとして、「われわれが日常的に行っている行為も対象になるおそれがあり、『準備行為』が条件だとしても歯止めにならない」と批判しています。
-- NHK NEWS WEB