コンピューターをはるかにしのぐ計算能力を発揮すると期待されている「量子コンピューター」の最新の研究成果について話し合う国際会議が、グーグルやNASA=アメリカ航空宇宙局など世界トップレベルの研究者が参加して、26日から東京で開かれています。人工知能や画期的な新薬の開発など私たちの生活にどのように影響していくのか注目されます。
量子コンピューターは従来のコンピューターが「0」か「1」の2進法で情報を表すのに対し、「0」であると同時に「1」でもあるという、電子などの極めて小さな世界の物理法則を応用することで、これまでにない超高速の計算を可能にするものです。
実現には数十年かかるとも言われていましたが、6年前にカナダのベンチャー企業が量子コンピューターのうち、量子アニーリングと呼ばれるタイプのものを世界で初めて発売。このコンピューターを購入したNASAやグーグルが人工知能や画期的な新薬の開発などに役立つ「組み合わせ最適化問題」と呼ばれる問題で、「従来のコンピューターの1億倍のスピードで計算できた」と発表したことから、急速に研究が加速しつつあります。
東京・丸の内で26日から開かれている国際会議にはグーグルやNASA、ロッキード・マーチン社などのほか、東京大学の研究者ら200人が参加しました。
このうちグーグルの担当者はカナダの量子コンピューターを参考に独自の量子コンピューターの開発を進めていて成果をあげつつあることや、人工知能に応用しようとしていると報告しました。また、マサチューセッツ工科大学の研究者はカナダの量子コンピューターの性能をしのぐ新たな量子コンピューターを開発するため、アメリカが国家プロジェクトを立ち上げて研究を進めていると紹介しました。
会議は今月29日まで開かれる予定で、量子コンピューターの計算能力を、大都市の渋滞解消や画期的な新薬の開発などにどのように生かせるのか議論が行われることになっています。
会議に参加したグーグル量子人工知能研究所のハルトムト・ネーヴェン博士は「量子コンピューターを使うことで人工知能は劇的に改善することができる。将来的には量子コンピューターなしに人工知能は存在しないだろう」と話していました。
また、国際会議の主催者で現在実用化されている量子コンピューターの基本原理「量子アニーリング」の概念を提唱した東京工業大学の西森秀稔教授は「この分野が基礎研究から応用に広がりつつあることを感じる。自分の提唱したときには純粋な基礎研究だったが、20年をへてここまで広がったのは驚きだ」と話していました。
-- NHK NEWS WEB