高齢化と過疎化を背景に、お年寄りの健康状態などを離れて住む家族が確かめることができる「見守りビジネス」に新たに参入する企業が相次いでいます。
大手IT企業の楽天は、全国のLPガス会社など18社が加盟する団体と提携し、来年春から見守りビジネスに参入する計画で、今月から鹿児島県内で試験的にサービスを始めました。
具体的には、ガスボンベの交換を担当する社員と団体の担当者が家庭を訪問し、面談の形でお年寄りの健康状態などを確認します。さらに、認知症の予防に向けた運動や食事のアドバイスを行うために社員が今後、専門の講座を受けて、内容を充実させることも検討しています。
訪問を受けた薩摩川内市に住む大重五男さんは(73)「今は元気ですが認知症への不安があるのでありがたいサービスだと思います」と話していました。離れて暮らす長女の美樹さんは、「毎日、電話するようにはしていますが長年つきあいのある方に見守ってもらえると安心です」と話していました。
LPガス会社代表の上薗真歩さんは「利用者の自宅でガス機器の点検をしながら直接、話を聞くことができることが強みで他社との差別化を図りたい」と話しています。
このLPガス会社と電気の小売り事業で提携している楽天は、都内の本社で、見守りビジネスの対象となる全国の家庭の電気の使用状況をリアルタイムで監視します。家電製品の使われ方や電気を使っている時間帯などからお年寄りが外出していなかったり、夜中も起きている日が続いたりといった異常を確認すると、LPガス会社に連絡し、ガス会社の社員が駆けつけます。
楽天エネルギー事業部の菅原雄一郎ジェネラルマネージャーは「料金面だけでなく、安心や地域貢献のサービスがお客様に選ばれる重要な要素になる」と話しています。
見守りビジネスをめぐっては、日本郵便がNTTドコモや日本IBMなどと新会社を設立して全国の郵便局の局員が定期的に自宅を訪問するほか、地域の商店街と連携しタブレット端末で食料品の配達の注文もできるようにする計画で、来年2月から順次、事業を展開することにしています。
また、東京電力はパナソニック、日立製作所と共同で高齢者の安否を確認するため、家電製品など電力の使用状況のデータを集める事業に参入することを先月発表しました。
社会の高齢化が進む中で、企業としては高齢者の見守りや認知症の予防など社会課題の解決にも取り組む姿勢を打ち出すとともに、高齢者との接点を深めることで拡大するシニア市場での競争を優位に運びたいという狙いがあり、こうした動きはますます活発になりそうです。
-- NHK NEWS WEB